講義リポート

広島大学

リチウムイオン電池を解説 講義で母校に「恩返し」
@京都府立西城陽高校

西原 禎文

大学院先進理工系科学研究科(理学部化学科) 教授 京都府出身/京都府立西城陽高等学校

 広島大学大学院先進理工系科学研究科(理学部化学科)の西原禎文教授は、京都府城陽市の府立西城陽高校を訪問。「リチウムイオン電池の昔、今、そして未来」のテーマで理系クラス2、3年生の54人に講義した。1994年に同高校を卒業したという西原教授。「お世話になった高校や先生方に恩返しがしたいと思って来ました」と、母校の教壇での第一声を発した。


 視線を注ぐ後輩たちを前に、西原教授は「リチウムを用いた安全で充電可能な二次電池を開発し、吉野彰先生ほか3人の研究者が2019年にノーベル化学賞を受賞しました」と話を切り出した。モバイル時代を支える電池として普及し、自動車や航空機にも搭載されているのがリチウムイオン電池だ。開発以前、充電可能な二次電池として普及していたのは鉛蓄電池であったが、重いうえに起電力はわずか2ボルトという効率の低さが問題だった。西原教授は、電池としての大きな起電力を得るために、電気を生み出す反応を起こしやすいリチウムの特性について説明。「電池の能力は『重さあたりの起動力』で測るため、軽さも備えるリチウムは素材として適しています」と加えた。


 リチウムイオン電池が誕生するまでの、研究の変遷にも触れた。1970年ごろ、二次電池の電極として初めてリチウム金属を用いて商品化したのが、吉野彰氏と共にノーベル賞を受賞したスタンリー・ウィッティンガム氏。「しかし金属であったため、使用を重ねると発火する事例が多発し、普及には至りませんでした」。後に続いた同じく受賞者のジョン・グッドイナフ氏は、リチウム金属の対極として「コバルト酸リチウム」の組み合わせを提案し、4ボルトという優れた起電力の電池を開発したと話した。さらに吉野氏が、コバルト酸リチウムと炭素材料という正極と負極の組み合わせを提案。金属を使用しない安全性や、小型化、軽量化を追究し、リチウムイオン電池は現在の形になったと紹介した。


 一方で「リチウムイオンの通り道となる電解液が外にもれると、発火の危険性がある」と現状の課題も指摘。次世代の電池として、電解液の部分を固体にして安全性を高める「全固体電池」の開発が進んでいることを、自身の研究内容を交えながら説明した。


 講義後は生徒から研究に関する質問を受け、「大学は自由でとても楽しい場所。みなさんもぜひ大学で学んでほしい」と後輩たちに熱く呼び掛けた。


 聴講した山田幸輝さん(3年)は「脱化石燃料社会につながるリチウムイオン電池について、深く知ることができた。大学では物理学や新エネルギーについて学び、環境や資源の問題を解決したい」と話した。倉本高汰さん(2年)は「リチウムイオン電池の仕組みは授業で習ったが、教科書にない発展的な内容も知ることができ、大学の学びがイメージできた。僕も西原教授のように、いつか母校に何かの形で恩返しができるような存在になれたら」と、先輩の姿に刺激たっぷりの様子で振り返っていた。

広島大学

12の学部を持つ国内有数の総合研究大学。原爆投下から4年後の1949年、広島に「平和の大学」として開学した。
2022年8月には、広島大学の敷地内に誘致した米国アリゾナ州立大学の広島大学グローバル校が学生の受け入れを始める。

広島大学

リチウムイオン電池を解説
講義で母校に「恩返し」
@京都府立西城陽高校

西原 禎文

大学院先進理工系科学研究科(理学部化学科) 教授
京都府出身/京都府立西城陽高等学校

 広島大学大学院先進理工系科学研究科(理学部化学科)の西原禎文教授は、京都府城陽市の府立西城陽高校を訪問。「リチウムイオン電池の昔、今、そして未来」のテーマで理系クラス2、3年生の54人に講義した。1994年に同高校を卒業したという西原教授。「お世話になった高校や先生方に恩返しがしたいと思って来ました」と、母校の教壇での第一声を発した。


 視線を注ぐ後輩たちを前に、西原教授は「リチウムを用いた安全で充電可能な二次電池を開発し、吉野彰先生ほか3人の研究者が2019年にノーベル化学賞を受賞しました」と話を切り出した。モバイル時代を支える電池として普及し、自動車や航空機にも搭載されているのがリチウムイオン電池だ。開発以前、充電可能な二次電池として普及していたのは鉛蓄電池であったが、重いうえに起電力はわずか2ボルトという効率の低さが問題だった。西原教授は、電池としての大きな起電力を得るために、電気を生み出す反応を起こしやすいリチウムの特性について説明。「電池の能力は『重さあたりの起動力』で測るため、軽さも備えるリチウムは素材として適しています」と加えた。


 リチウムイオン電池が誕生するまでの、研究の変遷にも触れた。1970年ごろ、二次電池の電極として初めてリチウム金属を用いて商品化したのが、吉野彰氏と共にノーベル賞を受賞したスタンリー・ウィッティンガム氏。「しかし金属であったため、使用を重ねると発火する事例が多発し、普及には至りませんでした」。後に続いた同じく受賞者のジョン・グッドイナフ氏は、リチウム金属の対極として「コバルト酸リチウム」の組み合わせを提案し、4ボルトという優れた起電力の電池を開発したと話した。さらに吉野氏が、コバルト酸リチウムと炭素材料という正極と負極の組み合わせを提案。金属を使用しない安全性や、小型化、軽量化を追究し、リチウムイオン電池は現在の形になったと紹介した。


 一方で「リチウムイオンの通り道となる電解液が外にもれると、発火の危険性がある」と現状の課題も指摘。次世代の電池として、電解液の部分を固体にして安全性を高める「全固体電池」の開発が進んでいることを、自身の研究内容を交えながら説明した。


 講義後は生徒から研究に関する質問を受け、「大学は自由でとても楽しい場所。みなさんもぜひ大学で学んでほしい」と後輩たちに熱く呼び掛けた。


 聴講した山田幸輝さん(3年)は「脱化石燃料社会につながるリチウムイオン電池について、深く知ることができた。大学では物理学や新エネルギーについて学び、環境や資源の問題を解決したい」と話した。倉本高汰さん(2年)は「リチウムイオン電池の仕組みは授業で習ったが、教科書にない発展的な内容も知ることができ、大学の学びがイメージできた。僕も西原教授のように、いつか母校に何かの形で恩返しができるような存在になれたら」と、先輩の姿に刺激たっぷりの様子で振り返っていた。

広島大学

12の学部を持つ国内有数の総合研究大学。原爆投下から4年後の1949年、広島に「平和の大学」として開学した。2022年8月には、広島大学の敷地内に誘致した米国アリゾナ州立大学の広島大学グローバル校が学生の受け入れを始める。