講義リポート

神戸市外国語大学

ロシアに根付く呪術信仰の世界
@東洋大学付属牛久高校(茨城県)

藤原 潤子

外国語学部ロシア学科 准教授 兵庫県出身/兵庫県立兵庫高等学校

 神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科の藤原潤子准教授は、茨城県牛久市の東洋大学付属牛久高校を訪問。特別進学コースと中高一貫コースの1年生132人に、「現代ロシアの呪術信仰の世界」というテーマで講義した。


 藤原准教授は文化人類学の手法でロシアを研究している。冒頭に「外国語大学では言語だけでなく、その国の文化や社会、政治経済など、幅広い分野を総合的に学ぶことができます」と紹介。ロシアに古くから根付く呪術信仰について、歴史的背景や現地調査の結果を交えながら説明した。


 ロシアでは恋愛や病気治療、仕事など、さまざまな場面で呪文のような呪術が用いられてきたが、ソ連時代には社会主義建設を妨げる存在として、無神論政策がとられたという。その後、1991年にソ連が崩壊すると、人々の心の隙間に入り込むように宗教やオカルトが広まり、再び呪術が使われるように。藤原准教授は2002年から06年にかけて現地調査を実施し、呪術を信仰する人や呪術師たちの体験談を集めた。


 医師でも治せなかった子どもの病気を呪術師がたった1時間で治療してしまったと語る母親や、18歳の頃に呪術師だった祖母の唾液を飲み込み、能力を受け継いだと話す呪術師のインタビューなどを紹介。さらに、「呪術の効果について、科学的根拠を求める人が増えてきました」と、呪術をとりまく環境の変化などにも言及した。


 続いて、呪術関連の著書を100冊以上出版し、多くの支持を集めるシベリア在住の呪術師ナターリヤ・ステパーノバを取り上げた。伝統的に呪術は秘儀であり、ごく限られた人にのみ伝えられてきたという。しかし、ステパーノバは読者からの相談に答えるという形で、「夫が出張先で浮気をしないようにする呪文」や「アルコール依存症の息子を助ける呪文」など、さまざまなシチュエーションにあわせた呪文を伝授。「ソ連時代に失われた伝統を取り戻したいと願う人たちから人気を集めている」と解説した。


 最後に、「遠い国の話のように聞こえたかもしれませんが、日本にも古くからわら人形や縁切り神社といった呪いの文化が根付いています」と指摘。「みなさんも好きな人と両思いになりたくて、おまじないを唱えたり、雑誌などに書かれている占いを信じたりしたことはありませんか? これも一つの呪術です。呪術という視点で自分の周りを見回してみると、きっと新しい発見があります」と締めくくった。


 講義後、生徒からの「呪術を試したことはありますか?」という質問に対し、「私は呪術を信じていないので、積極的には実践しません。ただ、心配事がある時にふとおまじないをするなど、呪術的な行為をしてしまうことはありますね」と回答。


 生徒を代表してロシア人の母親を持つ塚田パリーナさんがロシア語で感謝の言葉を述べると、藤原准教授も「スパシーバ(ありがとう)」とロシア語で応じた。塚田さんは「母親からも聞いたことがない話だった。大学に進んだら、いろんな分野の講義を受けて、興味関心を広げたいです」と話した。


 同じく生徒を代表して感謝の言葉を述べた市ノ澤璃紗さんは「専門的な講義を聴いて、大学を少し身近に感じました。大学では興味のある観光について、より深く学んでみたいです」と感想を話した。

神戸市外国語大学

1946年創立の神戸市立外事専門学校が前身。1949年に現大学に。英米、ロシア、中国、イスパニア、国際関係、第2部英米の6学科。創立75周年を迎え、2021年より、自分の殻や学問の枠を超えて活躍する人材を育成すべく新ブランドコンセプト「HaMiDaSu」を掲げる。

神戸市外国語大学

ロシアに根付く呪術信仰の世界
@東洋大学付属牛久高校(茨城県)

藤原 潤子

外国語学部ロシア学科 准教授
兵庫県出身/兵庫県立兵庫高等学校

 神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科の藤原潤子准教授は、茨城県牛久市の東洋大学付属牛久高校を訪問。特別進学コースと中高一貫コースの1年生132人に、「現代ロシアの呪術信仰の世界」というテーマで講義した。


 藤原准教授は文化人類学の手法でロシアを研究している。冒頭に「外国語大学では言語だけでなく、その国の文化や社会、政治経済など、幅広い分野を総合的に学ぶことができます」と紹介。ロシアに古くから根付く呪術信仰について、歴史的背景や現地調査の結果を交えながら説明した。


 ロシアでは恋愛や病気治療、仕事など、さまざまな場面で呪文のような呪術が用いられてきたが、ソ連時代には社会主義建設を妨げる存在として、無神論政策がとられたという。その後、1991年にソ連が崩壊すると、人々の心の隙間に入り込むように宗教やオカルトが広まり、再び呪術が使われるように。藤原准教授は2002年から06年にかけて現地調査を実施し、呪術を信仰する人や呪術師たちの体験談を集めた。


 医師でも治せなかった子どもの病気を呪術師がたった1時間で治療してしまったと語る母親や、18歳の頃に呪術師だった祖母の唾液を飲み込み、能力を受け継いだと話す呪術師のインタビューなどを紹介。さらに、「呪術の効果について、科学的根拠を求める人が増えてきました」と、呪術をとりまく環境の変化などにも言及した。


 続いて、呪術関連の著書を100冊以上出版し、多くの支持を集めるシベリア在住の呪術師ナターリヤ・ステパーノバを取り上げた。伝統的に呪術は秘儀であり、ごく限られた人にのみ伝えられてきたという。しかし、ステパーノバは読者からの相談に答えるという形で、「夫が出張先で浮気をしないようにする呪文」や「アルコール依存症の息子を助ける呪文」など、さまざまなシチュエーションにあわせた呪文を伝授。「ソ連時代に失われた伝統を取り戻したいと願う人たちから人気を集めている」と解説した。


 最後に、「遠い国の話のように聞こえたかもしれませんが、日本にも古くからわら人形や縁切り神社といった呪いの文化が根付いています」と指摘。「みなさんも好きな人と両思いになりたくて、おまじないを唱えたり、雑誌などに書かれている占いを信じたりしたことはありませんか? これも一つの呪術です。呪術という視点で自分の周りを見回してみると、きっと新しい発見があります」と締めくくった。


 講義後、生徒からの「呪術を試したことはありますか?」という質問に対し、「私は呪術を信じていないので、積極的には実践しません。ただ、心配事がある時にふとおまじないをするなど、呪術的な行為をしてしまうことはありますね」と回答。


 生徒を代表してロシア人の母親を持つ塚田パリーナさんがロシア語で感謝の言葉を述べると、藤原准教授も「スパシーバ(ありがとう)」とロシア語で応じた。塚田さんは「母親からも聞いたことがない話だった。大学に進んだら、いろんな分野の講義を受けて、興味関心を広げたいです」と話した。


 同じく生徒を代表して感謝の言葉を述べた市ノ澤璃紗さんは「専門的な講義を聴いて、大学を少し身近に感じました。大学では興味のある観光について、より深く学んでみたいです」と感想を話した。

神戸市外国語大学

1946年創立の神戸市立外事専門学校が前身。1949年に現大学に。英米、ロシア、中国、イスパニア、国際関係、第2部英米の6学科。創立75周年を迎え、2021年より、自分の殻や学問の枠を超えて活躍する人材を育成すべく新ブランドコンセプト「HaMiDaSu」を掲げる。