講義リポート

小樽商科大学

国際法が果たす役割
@常総学院高校(茨城県)

張 博一

商学部企業法学科 准教授 中国・吉林省出身/岡山県立岡山城東高等学校

 小樽商科大学・商学部企業法学科の張博一准教授は、茨城県土浦市の常総学院高校を訪問。「法から国際問題をみる」と題し、国際社会における国際法の役割について1、2年の約80人に講義した。


 張准教授はまず、憲法をはじめとした国内法の他にも、国際社会には国家間や国際機関の加盟国同士が交わす条約や協定に代表される「国際法」があることを紹介。国の範囲を超えた問題の解決や、世界の平和と共存のために大切な役割を果たしていると説明した。


 「国際法と呼ばれる一つのものがあるのではなく、武力紛争から経済、気候、人権に関わるものまで様々なものがある。国はそれらを守りながら行動しています」と張准教授。2001年の9・11テロに端を発したアメリカの対アフガニスタン攻撃を例に国連の「武力不行使原則」について、また日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の海外逃亡事件からは国際間の犯罪人引き渡し条約について解説した。


 紛争や犯罪に関するものだけでなく、身近な国際法もある。例えば温室効果ガスの削減をめざす枠組み「パリ協定」は環境問題に関する国際法の一つだ。人権についても、第2次世界大戦終結以降、国際的に取り組むべき課題として盛んに議論されてきた。


 1979年に国連採択された「女子差別撤廃条約」を契機に、日本国内でも国籍法の改正や男女雇用機会均等法の制定、学習指導要領の改正が実現した。張准教授は「国際法はみなさんの生活にも決して無関係ではなく、社会が変わるきっかけになることもあるのです」と話した。


 後半では大学での法学部の学びについて触れた。「法学部で学ぶ意義は、法曹界に進むためだけでなく、勉強する過程で論理的に考えるスキルが身につくこと」と張准教授。演繹えんえき法の考え方を法律に当てはめた「法的三段論法」などを紹介し、「物事を多面的な視点から中立公平に扱い議論を収める力は、どんな職業についても役に立つことでしょう」と語りかけた。


 講義後の質疑応答では、「どうして法学部を選んだのですか」や「2国間や国連などの機関以外で結ばれる国際法はありますか」といった質問のほかに、「先生が改正したほうがいいと考える国内法はありますか」「北海道からみた北極海航路についてどう考えますか」など専門的なものもあった。張准教授は「みなさんとても詳しいですね」と驚きながら質問に答え、生徒たちも熱心に耳を傾けていた。


 講義を受けた高安紗彩さん(2年)は、「法学部志望なので聞いたことのある話題もあり、先生の講義を聴いてより理解が深まりました」。兄が法学部に在学中という脇田ヒロさん(2年)は「国際法は想像していたよりも身近だと知りました。私も多角的な考え方を身に付けたい」と感想を話した。

小樽商科大学

1911年開学の小樽高等商業学校を前身とし、1949年に新制大学として発足。国立大学で唯一の社会科学系単科大学で、学部と大学院をもつ。学部は商学部のみの1学部4学科(昼間、夜間主コース)。グローバルな視点を持ち、地方(ローカル)の経済発展にも貢献できる「グローカル」な人材の育成をめざす。

小樽商科大学

国際法が果たす役割
@常総学院高校(茨城県)

張 博一

商学部企業法学科 准教授
中国・吉林省出身/岡山県立岡山城東高等学校

 小樽商科大学・商学部企業法学科の張博一准教授は、茨城県土浦市の常総学院高校を訪問。「法から国際問題をみる」と題し、国際社会における国際法の役割について1、2年の約80人に講義した。


 張准教授はまず、憲法をはじめとした国内法の他にも、国際社会には国家間や国際機関の加盟国同士が交わす条約や協定に代表される「国際法」があることを紹介。国の範囲を超えた問題の解決や、世界の平和と共存のために大切な役割を果たしていると説明した。


 「国際法と呼ばれる一つのものがあるのではなく、武力紛争から経済、気候、人権に関わるものまで様々なものがある。国はそれらを守りながら行動しています」と張准教授。2001年の9・11テロに端を発したアメリカの対アフガニスタン攻撃を例に国連の「武力不行使原則」について、また日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の海外逃亡事件からは国際間の犯罪人引き渡し条約について解説した。


 紛争や犯罪に関するものだけでなく、身近な国際法もある。例えば温室効果ガスの削減をめざす枠組み「パリ協定」は環境問題に関する国際法の一つだ。人権についても、第2次世界大戦終結以降、国際的に取り組むべき課題として盛んに議論されてきた。


 1979年に国連採択された「女子差別撤廃条約」を契機に、日本国内でも国籍法の改正や男女雇用機会均等法の制定、学習指導要領の改正が実現した。張准教授は「国際法はみなさんの生活にも決して無関係ではなく、社会が変わるきっかけになることもあるのです」と話した。


 後半では大学での法学部の学びについて触れた。「法学部で学ぶ意義は、法曹界に進むためだけでなく、勉強する過程で論理的に考えるスキルが身につくこと」と張准教授。演繹えんえき法の考え方を法律に当てはめた「法的三段論法」などを紹介し、「物事を多面的な視点から中立公平に扱い議論を収める力は、どんな職業についても役に立つことでしょう」と語りかけた。


 講義後の質疑応答では、「どうして法学部を選んだのですか」や「2国間や国連などの機関以外で結ばれる国際法はありますか」といった質問のほかに、「先生が改正したほうがいいと考える国内法はありますか」「北海道からみた北極海航路についてどう考えますか」など専門的なものもあった。張准教授は「みなさんとても詳しいですね」と驚きながら質問に答え、生徒たちも熱心に耳を傾けていた。


 講義を受けた高安紗彩さん(2年)は、「法学部志望なので聞いたことのある話題もあり、先生の講義を聴いてより理解が深まりました」。兄が法学部に在学中という脇田ヒロさん(2年)は「国際法は想像していたよりも身近だと知りました。私も多角的な考え方を身に付けたい」と感想を話した。

小樽商科大学

1911年開学の小樽高等商業学校を前身とし、1949年に新制大学として発足。国立大学で唯一の社会科学系単科大学で、学部と大学院をもつ。学部は商学部のみの1学部4学科(昼間、夜間主コース)。グローバルな視点を持ち、地方(ローカル)の経済発展にも貢献できる「グローカル」な人材の育成をめざす。