講義リポート

公立諏訪東京理科大学

AIを使いこなそう
@埼玉県立和光国際高校

小越 澄雄

学長 埼玉県出身/東京都立上野高等学校

 公立諏訪東京理科大学の小越澄雄学長は、埼玉県和光市の県立和光国際高校を訪れ、「AIのコモディティ化は可能か?」と題し、1、2年の21人に講義した。


 コモディティ化とは、経済学用語で汎用品化を意味する。「現代は誰もがAIを使える時代」と小越学長。前半では、AIの歴史を紹介した。


 「人工知能(AI)」という言葉は、1956年に初めて提唱された。1950~60年代には単純なゲームやパズルをこなすAIが、1980年代には質問に応じてあらかじめ入力された答えを提示するAIなどがさかんに研究されたが、いずれもコストや利用範囲の面で実用的ではなく、次第に下火になっていった。1997年にAI「ディープ・ブルー」がチェスで人間に勝利。2011年にアメリカのクイズ番組で人に勝利した「ワトソン」は、医療分野での活用も期待されたが、導入費用が数千万円かかることから、やはり一般への普及は難しいものと考えられた。


 しかし、2012年に「深層学習(ディープラーニング)」の仕組みが開発されたことで、AIの応用の幅が飛躍的に広がったという。人間の神経細胞の構造をまねてプログラム上に再現し、機械が自動的に学習を重ねて情報処理の速度や精度を高めることができる仕組みで、グーグルをはじめとしたIT企業がいま注力している分野でもある。


 小越学長は、2016年に囲碁で人間に勝利した「アルファ碁」を例に挙げた。まず「アルファ碁」はウェブ上でアマチュア棋士と対局し約3千万手を学習。次に自身との対局を繰り返す「強化学習」を行い、高い確率で勝利するまでの棋力を得たことを解説した。「人と違って過去にとらわれないのがAIの特徴。新しいことをどんどん試すことができます」と小越学長。深層学習を取り入れたAIは、製品検査や人の認識、自動運転など社会に欠かせない存在になっていると話した。


 後半では、公立諏訪東京理科大学で2020年から始まった「AIコンテスト」で、種類の異なるスミレの写真の分類や、河川の水位を予測するAIを作る課題に学生たちが取り組んでいる話題にも触れた。AIのプログラミング例は一般公開されているものも多く、オンライン上で操作できるサービスもグーグルなどから提供されているという。小越学長は、AI研究は日本でも積極的に行われているものの、世界で活躍するトップ研究者に日本出身者が少ないことを指摘。「Z世代のみなさんにとってAIは私たち以上に身近なはず。道具の一つとして使いこなせるようになって欲しい」と語りかけた。


 講義後、𢰝木もてぎ敦さん(2年)が、自身が興味を持っているというデジタルサイエンスとAIとの関わりについて質問。小越学長は「統計学でもビッグデータを扱うにはAIが欠かせません。難しくないので、ぜひ取り組んでみて」と答えた。𢰝木さんは「AIは難しいというイメージがありましたが、触れてみたい気持ちになりました」と感想を話した。

公立諏訪東京理科大学

2002年、東京理科大学の姉妹校として開学。2018年、長野県の諏訪地域6市町村が運営する公立大学となった。工学部に情報応用工学科と機械電気工学科がある。2020年度から、全学生を対象にした「データサイエンス・AI人材リテラシー教育プログラム」を新たに開始。

公立諏訪東京理科大学

AIを使いこなそう
@埼玉県立和光国際高校

小越 澄雄

学長
埼玉県出身/東京都立上野高等学校

 公立諏訪東京理科大学の小越澄雄学長は、埼玉県和光市の県立和光国際高校を訪れ、「AIのコモディティ化は可能か?」と題し、1、2年の21人に講義した。


 コモディティ化とは、経済学用語で汎用品化を意味する。「現代は誰もがAIを使える時代」と小越学長。前半では、AIの歴史を紹介した。


 「人工知能(AI)」という言葉は、1956年に初めて提唱された。1950~60年代には単純なゲームやパズルをこなすAIが、1980年代には質問に応じてあらかじめ入力された答えを提示するAIなどがさかんに研究されたが、いずれもコストや利用範囲の面で実用的ではなく、次第に下火になっていった。1997年にAI「ディープ・ブルー」がチェスで人間に勝利。2011年にアメリカのクイズ番組で人に勝利した「ワトソン」は、医療分野での活用も期待されたが、導入費用が数千万円かかることから、やはり一般への普及は難しいものと考えられた。


 しかし、2012年に「深層学習(ディープラーニング)」の仕組みが開発されたことで、AIの応用の幅が飛躍的に広がったという。人間の神経細胞の構造をまねてプログラム上に再現し、機械が自動的に学習を重ねて情報処理の速度や精度を高めることができる仕組みで、グーグルをはじめとしたIT企業がいま注力している分野でもある。


 小越学長は、2016年に囲碁で人間に勝利した「アルファ碁」を例に挙げた。まず「アルファ碁」はウェブ上でアマチュア棋士と対局し約3千万手を学習。次に自身との対局を繰り返す「強化学習」を行い、高い確率で勝利するまでの棋力を得たことを解説した。「人と違って過去にとらわれないのがAIの特徴。新しいことをどんどん試すことができます」と小越学長。深層学習を取り入れたAIは、製品検査や人の認識、自動運転など社会に欠かせない存在になっていると話した。


 後半では、公立諏訪東京理科大学で2020年から始まった「AIコンテスト」で、種類の異なるスミレの写真の分類や、河川の水位を予測するAIを作る課題に学生たちが取り組んでいる話題にも触れた。AIのプログラミング例は一般公開されているものも多く、オンライン上で操作できるサービスもグーグルなどから提供されているという。小越学長は、AI研究は日本でも積極的に行われているものの、世界で活躍するトップ研究者に日本出身者が少ないことを指摘。「Z世代のみなさんにとってAIは私たち以上に身近なはず。道具の一つとして使いこなせるようになって欲しい」と語りかけた。


 講義後、𢰝木もてぎ敦さん(2年)が、自身が興味を持っているというデジタルサイエンスとAIとの関わりについて質問。小越学長は「統計学でもビッグデータを扱うにはAIが欠かせません。難しくないので、ぜひ取り組んでみて」と答えた。𢰝木さんは「AIは難しいというイメージがありましたが、触れてみたい気持ちになりました」と感想を話した。

公立諏訪東京理科大学

2002年、東京理科大学の姉妹校として開学。2018年、長野県の諏訪地域6市町村が運営する公立大学となった。工学部に情報応用工学科と機械電気工学科がある。2020年度から、全学生を対象にした「データサイエンス・AI人材リテラシー教育プログラム」を新たに開始。