講義リポート

兵庫県立大学

世の中を変える画像認識の技術
@雲雀丘学園高校(兵庫県)

日浦 慎作

工学研究科 教授 兵庫県出身/兵庫県立小野高等学校

 兵庫県立大学大学院工学研究科の日浦慎作教授は、兵庫県宝塚市の雲雀丘学園高校を訪問。同中学の生徒を含めて39人を前に、「カメラの未来~画像認識で世の中はこう変わる」をテーマに話した。


 「皆さん、カメラは持っていますか」。講義は日浦教授の質問から始まった。デジタルカメラやスマートフォンですっかり身近になった写真。今は画像としてすぐに見たり、発信、共有したりできる点をあげ、「カメラは単に『写す』ものから、画像を電気信号に変えるものとなり、得られた情報をコンピューターで処理する時代になっています」と強調した。


 まず取り上げたのはエレベーターをめぐる研究。エレベーターは、内部や周囲にカメラを複数台取り付け、人が駆け込むと閉まりかけたドアを開けたり、全員の乗降が終わるまでドアを開けて待ったりするなど、新たな機能の開発が進む。ドアの開閉など同じ動きの繰り返しをコンピューターに学習させると、個々に違う動きをする人間は未知情報として検知し、異なる対応ができるようになるという。「皆さんと同じく、画像認識でも大切なのは学習です。コンピューターが人を見守ってくれるなんて、すばらしい技術だと思いませんか」と語りかけた。


 続いて、デジカメやスマホで一般的になった顔検出の仕組みに話が移った。1990年代から企業や大学で続けられ、2001年に米国の研究者が発表した「ビオラ・ジョーンズ法」を機に一気に花開いた顔検出技術。目、鼻、口などの器官の特徴と規則性をコンピューターに学習させることで顔検出が可能になっていると解説したうえで、手足の細かな動きが検知できるまでに研究が進む現状を報告。スポーツやダンスの映像を使い、群衆の中から肩、ひじ、かかとなどを見つけ出し、各部位を結ぶことで体の位置や動きが認識できる様子を解説した。日浦教授は「例えば体操競技は人が出来栄えを審査しますが、近い将来は画像認識が役立つかもしれません」と話した。


 一方、画像認識では物や空間の奥行きの把握がまだ難しいとも指摘した。「人間は太陽光が作り出す陰影によって物の向きや奥行きを判断しています。脳細胞のほとんどは目から入った情報の処理に使われるとされており、画像認識はすぐに追いつけませんが、頑張る意義はそこにあると感じています」


 最後は「LiDAR(ライダー)」と呼ぶセンサーと画像認識を組み合わせる最新動向を紹介した。ライダーはレーザー光を照射して物体までの距離や方向を測定する装置で、車の自動走行をはじめ、各分野で急速に採用が進んでいる。「目的地を設定して自動運転で出かける日も、皆さんが社会の主役になる20年後ぐらいにはやって来るでしょう。これから情報科学は生活の中にもっと組み込まれます。楽しいことを実現する画像認識技術の専門家をぜひめざしてほしい」と結んだ。


 聴講した佐藤浬央さん(高校2年)は「身近なカメラの技術がかなり進んでいると知って驚きました。大学の専門的な授業の雰囲気が感じられて、とても良い経験になりました」と声を弾ませていた。

兵庫県立大学

2004年に神戸商科大学、姫路工業大学、兵庫県立看護大学が統合して開学。姫路、神戸、明石などに9キャンパスを構える。2019年に国際商経学部、社会情報科学部を設置。6学部9学科がある。

兵庫県立大学

世の中を変える画像認識の技術
@雲雀丘学園高校(兵庫県)

日浦 慎作

工学研究科 教授
兵庫県出身/兵庫県立小野高等学校

 兵庫県立大学大学院工学研究科の日浦慎作教授は、兵庫県宝塚市の雲雀丘学園高校を訪問。同中学の生徒を含めて39人を前に、「カメラの未来~画像認識で世の中はこう変わる」をテーマに話した。


 「皆さん、カメラは持っていますか」。講義は日浦教授の質問から始まった。デジタルカメラやスマートフォンですっかり身近になった写真。今は画像としてすぐに見たり、発信、共有したりできる点をあげ、「カメラは単に『写す』ものから、画像を電気信号に変えるものとなり、得られた情報をコンピューターで処理する時代になっています」と強調した。


 まず取り上げたのはエレベーターをめぐる研究。エレベーターは、内部や周囲にカメラを複数台取り付け、人が駆け込むと閉まりかけたドアを開けたり、全員の乗降が終わるまでドアを開けて待ったりするなど、新たな機能の開発が進む。ドアの開閉など同じ動きの繰り返しをコンピューターに学習させると、個々に違う動きをする人間は未知情報として検知し、異なる対応ができるようになるという。「皆さんと同じく、画像認識でも大切なのは学習です。コンピューターが人を見守ってくれるなんて、すばらしい技術だと思いませんか」と語りかけた。


 続いて、デジカメやスマホで一般的になった顔検出の仕組みに話が移った。1990年代から企業や大学で続けられ、2001年に米国の研究者が発表した「ビオラ・ジョーンズ法」を機に一気に花開いた顔検出技術。目、鼻、口などの器官の特徴と規則性をコンピューターに学習させることで顔検出が可能になっていると解説したうえで、手足の細かな動きが検知できるまでに研究が進む現状を報告。スポーツやダンスの映像を使い、群衆の中から肩、ひじ、かかとなどを見つけ出し、各部位を結ぶことで体の位置や動きが認識できる様子を解説した。日浦教授は「例えば体操競技は人が出来栄えを審査しますが、近い将来は画像認識が役立つかもしれません」と話した。


 一方、画像認識では物や空間の奥行きの把握がまだ難しいとも指摘した。「人間は太陽光が作り出す陰影によって物の向きや奥行きを判断しています。脳細胞のほとんどは目から入った情報の処理に使われるとされており、画像認識はすぐに追いつけませんが、頑張る意義はそこにあると感じています」


 最後は「LiDAR(ライダー)」と呼ぶセンサーと画像認識を組み合わせる最新動向を紹介した。ライダーはレーザー光を照射して物体までの距離や方向を測定する装置で、車の自動走行をはじめ、各分野で急速に採用が進んでいる。「目的地を設定して自動運転で出かける日も、皆さんが社会の主役になる20年後ぐらいにはやって来るでしょう。これから情報科学は生活の中にもっと組み込まれます。楽しいことを実現する画像認識技術の専門家をぜひめざしてほしい」と結んだ。


 聴講した佐藤浬央さん(高校2年)は「身近なカメラの技術がかなり進んでいると知って驚きました。大学の専門的な授業の雰囲気が感じられて、とても良い経験になりました」と声を弾ませていた。

兵庫県立大学

2004年に神戸商科大学、姫路工業大学、兵庫県立看護大学が統合して開学。姫路、神戸、明石などに9キャンパスを構える。2019年に国際商経学部、社会情報科学部を設置。6学部9学科がある。