講義リポート

信州大学

ふんを遺伝子解析 例外の謎を解く
@福島県立福島東高校

東城 幸治

学術研究院 理学系 教授(理学部 理学科 生物学コース)  福島県出身/福島県立福島東高等学校

 信州大学学術研究院理学系の東城幸治教授は、母校でもある福島市浜田町の県立福島東高校を訪問。「DNAからひも解く 生きものたちのふしぎな世界」と題し、1年生と3年生の約240人に講義した。


 東城教授は進化生態学が専門。講義では、「生物学には数学や物理学の理論だけでは説明できない例外なことがあり、その例外の謎解きが好きで、変わり者の生き物を研究してきた」と自己紹介した。


 最近の研究成果として、長野県松本市の上高地に生息するニホンザルがイワナなどを川に入って食べて越冬していることを2021年、世界で初めて報告した経緯を説明した。上高地のサルが川の石をひっくりかえして川虫を食べているのをみて論文にしようと、サルのふんを採取し、遺伝子を解析。サルが食べていたもののDNAを調べたところ、イワナのDNAが出てきて驚いたという。


 サルは水が苦手で、サルの専門家からは「サルが魚を食べているのをみたのか」と批判されたが、研究が報道されると上高地に入った人からサルが魚を食べている写真が送られてきて、確かさが示されたエピソードも紹介した。


 また、渓流に生息する日本の固有種のカワネズミのふんを各地で採取して遺伝子を解析し、カワネズミが遺伝的に地域ごとに大きく四つの系統に分けられることがわかった研究も説明。大陸移動による日本列島のでき方と生物の分布が重なってみえる研究成果も示し、生物の進化を考えるうえで、日本列島がユニークであることを強調した。


 さらにオオシロカゲロウという昆虫の中に、メスしかいない集団があり、それが西日本で発生し、東日本でも増えてきていることを遺伝子解析で発見した研究も紹介。増えてきたことを示す過去のデータが、東城教授が福島東高校の生物部でかかわった、阿武隈川で毎年大発生していたオオシロカゲロウのフィールド調査だったことも明かした。
「原点にあるのは不思議だと思うこと。それも身近なところにある」と、研究への魅了を語った。


 長谷部鴻太さん(1年)は「サルは魚を捕らないのが常識と思われていたのを、ふんのゲノム解析で覆してしまったのを聞き、おもしろかった。いつか生物の研究をしてみたい」と感想を話した。

信州大学

旧制松本高校、松本医科大学、長野師範学校などを包括し、1949年に新制大学として発足。人文、教育、経法、理、医、工、農、繊維の8学部からなる。理学部は数学科と理学科の2学科に物理学、生物学などの7コースがある

信州大学

ふんを遺伝子解析 例外の謎を解く
@福島県立福島東高校

東城 幸治

学術研究院 理学系 教授(理学部 理学科 生物学コース)
福島県出身/福島県立福島東高等学校

 信州大学学術研究院理学系の東城幸治教授は、母校でもある福島市浜田町の県立福島東高校を訪問。「DNAからひも解く 生きものたちのふしぎな世界」と題し、1年生と3年生の約240人に講義した。


 東城教授は進化生態学が専門。講義では、「生物学には数学や物理学の理論だけでは説明できない例外なことがあり、その例外の謎解きが好きで、変わり者の生き物を研究してきた」と自己紹介した。


 最近の研究成果として、長野県松本市の上高地に生息するニホンザルがイワナなどを川に入って食べて越冬していることを2021年、世界で初めて報告した経緯を説明した。上高地のサルが川の石をひっくりかえして川虫を食べているのをみて論文にしようと、サルのふんを採取し、遺伝子を解析。サルが食べていたもののDNAを調べたところ、イワナのDNAが出てきて驚いたという。


 サルは水が苦手で、サルの専門家からは「サルが魚を食べているのをみたのか」と批判されたが、研究が報道されると上高地に入った人からサルが魚を食べている写真が送られてきて、確かさが示されたエピソードも紹介した。


 また、渓流に生息する日本の固有種のカワネズミのふんを各地で採取して遺伝子を解析し、カワネズミが遺伝的に地域ごとに大きく四つの系統に分けられることがわかった研究も説明。大陸移動による日本列島のでき方と生物の分布が重なってみえる研究成果も示し、生物の進化を考えるうえで、日本列島がユニークであることを強調した。


 さらにオオシロカゲロウという昆虫の中に、メスしかいない集団があり、それが西日本で発生し、東日本でも増えてきていることを遺伝子解析で発見した研究も紹介。増えてきたことを示す過去のデータが、東城教授が福島東高校の生物部でかかわった、阿武隈川で毎年大発生していたオオシロカゲロウのフィールド調査だったことも明かした。
「原点にあるのは不思議だと思うこと。それも身近なところにある」と、研究への魅了を語った。


 長谷部鴻太さん(1年)は「サルは魚を捕らないのが常識と思われていたのを、ふんのゲノム解析で覆してしまったのを聞き、おもしろかった。いつか生物の研究をしてみたい」と感想を話した。

信州大学

旧制松本高校、松本医科大学、長野師範学校などを包括し、1949年に新制大学として発足。人文、教育、経法、理、医、工、農、繊維の8学部からなる。理学部は数学科と理学科の2学科に物理学、生物学などの7コースがある