講義リポート

奈良女子大学

オリンピックが日本に残したものとは?
@大谷高校(大阪府)

石坂 友司

研究院生活環境科学系 准教授 北海道出身/函館ラ・サール高等学校

 奈良女子大学研究院生活環境科学系の石坂友司准教授は、大阪市阿倍野区の大谷高校を訪問し、「東京オリンピックは何を生んだのか―オリンピックの3つのゲームから考える―」のテーマで1、2年生約70人に講義を行った。


 石坂准教授はスポーツ社会学を専門にし、1998年の長野五輪や2021年の東京五輪などを対象に、スポーツのメガイベントが地域や都市、国に及ぼす影響を調査・研究している。講義の冒頭では、「五輪では、選手が競い合うアスレティック・ゲーム、テレビ放映権やスポンサーなど巨額のお金が動くコマーシャル・ゲーム、金メダルの獲得数で国力を示すパワー・ゲームの3種類のゲームが展開されています」と言及。それらが互いに与え合う影響について、実例を挙げて解説した。


 また、世論調査とともに、東京五輪開催までの道のりと大会の記憶をたどりながら「いろいろな混乱があって大変だったね、とやり過ごすことは簡単です。しかしこれだけ大きなイベントが日本社会に与えるインパクトは大きかったはず。スポーツ施設ができる、都市が元気になるといったポジティブな面だけではなく、そこにはネガティブな側面もあります。五輪で何が起きたのかを改めて考え、反省することが大切です」と話した。


 多額の維持費がかかる競技場の後利用など、今後の課題を指摘する一方で、注目している動きとして「東京都世田谷区では、馬術競技が行われた馬事公苑を中心に、五輪のメモリアルスペースをつくろうとする計画もあります」との事例も紹介した。最後に、「五輪の競技自体は楽しいイベントで感動もありましたが、競技場の後利用の問題を生み、コロナ下で開催したことで、スポーツが様々なダメージを受けました。そうした正負の遺産を、これから10年くらいかけて検証していきたいです」と締めくくった。


 聴講した八木さん(2年)は「五輪には多くの企業が関わり、テレビ放映に合わせて競技の開始時間にまで影響を及ぼしていると知り驚いた」と話した。井上遥香さん(2年)は「五輪はスポーツがメインで、普通は表の部分しか見られない。講義では事業の裏側がわかり勉強になった」と語った。スポーツ科学に興味があるという山岡史奈さん(2年)は「競技だけではなく、大会の後に残ったものについて深く考える良い機会になった」と講義を振り返った。

奈良女子大学

1908年設置の奈良女子高等師範学校を前身とし、1949年国立学校設置法の公布により発足した西日本唯一の国立女子大学。文学部、理学部、生活環境学部に加え、2022年4月、日本の女子大学初となる工学部を開設した。

奈良女子大学

オリンピックが
日本に残したものとは?
@大谷高校(大阪府)

石坂 友司

研究院生活環境科学系 准教授
北海道出身/函館ラ・サール高等学校

 奈良女子大学研究院生活環境科学系の石坂友司准教授は、大阪市阿倍野区の大谷高校を訪問し、「東京オリンピックは何を生んだのか―オリンピックの3つのゲームから考える―」のテーマで1、2年生約70人に講義を行った。


 石坂准教授はスポーツ社会学を専門にし、1998年の長野五輪や2021年の東京五輪などを対象に、スポーツのメガイベントが地域や都市、国に及ぼす影響を調査・研究している。講義の冒頭では、「五輪では、選手が競い合うアスレティック・ゲーム、テレビ放映権やスポンサーなど巨額のお金が動くコマーシャル・ゲーム、金メダルの獲得数で国力を示すパワー・ゲームの3種類のゲームが展開されています」と言及。それらが互いに与え合う影響について、実例を挙げて解説した。


 また、世論調査とともに、東京五輪開催までの道のりと大会の記憶をたどりながら「いろいろな混乱があって大変だったね、とやり過ごすことは簡単です。しかしこれだけ大きなイベントが日本社会に与えるインパクトは大きかったはず。スポーツ施設ができる、都市が元気になるといったポジティブな面だけではなく、そこにはネガティブな側面もあります。五輪で何が起きたのかを改めて考え、反省することが大切です」と話した。


 多額の維持費がかかる競技場の後利用など、今後の課題を指摘する一方で、注目している動きとして「東京都世田谷区では、馬術競技が行われた馬事公苑を中心に、五輪のメモリアルスペースをつくろうとする計画もあります」との事例も紹介した。最後に、「五輪の競技自体は楽しいイベントで感動もありましたが、競技場の後利用の問題を生み、コロナ下で開催したことで、スポーツが様々なダメージを受けました。そうした正負の遺産を、これから10年くらいかけて検証していきたいです」と締めくくった。


 聴講した八木さん(2年)は「五輪には多くの企業が関わり、テレビ放映に合わせて競技の開始時間にまで影響を及ぼしていると知り驚いた」と話した。井上遥香さん(2年)は「五輪はスポーツがメインで、普通は表の部分しか見られない。講義では事業の裏側がわかり勉強になった」と語った。スポーツ科学に興味があるという山岡史奈さん(2年)は「競技だけではなく、大会の後に残ったものについて深く考える良い機会になった」と講義を振り返った。

奈良女子大学

1908年設置の奈良女子高等師範学校を前身とし、1949年国立学校設置法の公布により発足した西日本唯一の国立女子大学。文学部、理学部、生活環境学部に加え、2022年4月、日本の女子大学初となる工学部を開設した。