講義リポート

兵庫県立大学

ラオスの村に学校建設 継続支援で自立を促す
@和歌山信愛高校(和歌山県)

乾 美紀

環境人間学部教授、学長特別補佐(ダイバーシティ推進担当) 兵庫県出身/兵庫県立夢野台高等学校

 兵庫県立大学環境人間学部の乾美紀教授は、和歌山市の和歌山信愛高校を訪問。「みんなで考えるSDGs(持続可能な開発目標)~地図にないラオスの村の教育問題~」のテーマで1、2年生約420人にリモート講義を行った。


 乾教授はラオスの山岳地帯をフィールドに、学校に行けない子どもへの教育支援について研究している。学校に行けない背景としては、貧困や児童労働、通学時間の長さなどがあるとし、2020年の対外債務が約161億米ドルと経済破綻はたん寸前のラオスでは、首都と地方の格差が大きいことにも言及。村によっては教師を雇うお金がなく、無給のボランティア教員も存在するなど、教育の質の低さにも触れた。SDGs目標の一つ「質の高い教育をみんなに」の実現を目指している乾教授は「教育が行き届けば、今後の経済成長や産業振興など、他のSDGs目標の達成にもつながります」と話し、自らが顧問を務める学生国際協力団体「CHISE」の取り組みを紹介した。


 同団体は2009年に設立。兵庫県立大学や関西学院大学など複数大学の学生が所属するインカレサークルで、これまでラオスで五つの学校の建設にかかわったという。現在は、標高1137メートルのへき地にある「ロンラード村」で、新しい学校の建設を目指して支援を行っている。コロナ禍の現在は、オンラインで子どもたちと交流。さらに授業見学やインタビュー調査を行い、課題を抽出している。その中で、「小学校の授業は国語であるラオス語で進められますが、ロンラード村に住む『モン族』は民族特有の『モン語』しか使えず、学習に支障をきたしていることに着目しました」と乾教授。課題解決のために、独自に講師を雇って就学前の4~6歳児を対象にラオス語教室を開き、スムーズに小学校で学べるサポートをしている事例を紹介した。定期的に行う音読テストでは子どもたちの成績がアップしているといい、「こうした取り組み一つで村に変化をもたらすことができると、学生たちの自信にもつながっています」と手ごたえを話した。最後に乾教授は「支援を持続的に行い、最終的には村の自立を促すことが大切です」と強調した。


 聴講した中村瞳見さん(1年)は「私たちが普通に学べているのは当たり前ではないと気づいた。ラオスの実態を人に伝え、私も一緒に考えていきたい」と話した。中井優希さん(2年)は、「学校では、カンボジアの発展を支えるクラブで活動しており、途上国支援には興味があった。将来教師になりたいので、日本以外の教育現場の実態を知れてよかった」と振り返った。

兵庫県立大学

2004年に神戸商科大学、姫路工業大学、兵庫県立看護大学が統合して開学。姫路、神戸、明石などに9キャンパスを構える。2019年に国際商経学部、社会情報科学部を設置。6学部9学科がある。

兵庫県立大学

ラオスの村に学校建設
継続支援で自立を促す
@和歌山信愛高校(和歌山県)

乾 美紀

環境人間学部教授、学長特別補佐(ダイバーシティ推進担当)
兵庫県出身/兵庫県立夢野台高等学校

 兵庫県立大学環境人間学部の乾美紀教授は、和歌山市の和歌山信愛高校を訪問。「みんなで考えるSDGs(持続可能な開発目標)~地図にないラオスの村の教育問題~」のテーマで1、2年生約420人にリモート講義を行った。


 乾教授はラオスの山岳地帯をフィールドに、学校に行けない子どもへの教育支援について研究している。学校に行けない背景としては、貧困や児童労働、通学時間の長さなどがあるとし、2020年の対外債務が約161億米ドルと経済破綻はたん寸前のラオスでは、首都と地方の格差が大きいことにも言及。村によっては教師を雇うお金がなく、無給のボランティア教員も存在するなど、教育の質の低さにも触れた。SDGs目標の一つ「質の高い教育をみんなに」の実現を目指している乾教授は「教育が行き届けば、今後の経済成長や産業振興など、他のSDGs目標の達成にもつながります」と話し、自らが顧問を務める学生国際協力団体「CHISE」の取り組みを紹介した。


 同団体は2009年に設立。兵庫県立大学や関西学院大学など複数大学の学生が所属するインカレサークルで、これまでラオスで五つの学校の建設にかかわったという。現在は、標高1137メートルのへき地にある「ロンラード村」で、新しい学校の建設を目指して支援を行っている。コロナ禍の現在は、オンラインで子どもたちと交流。さらに授業見学やインタビュー調査を行い、課題を抽出している。その中で、「小学校の授業は国語であるラオス語で進められますが、ロンラード村に住む『モン族』は民族特有の『モン語』しか使えず、学習に支障をきたしていることに着目しました」と乾教授。課題解決のために、独自に講師を雇って就学前の4~6歳児を対象にラオス語教室を開き、スムーズに小学校で学べるサポートをしている事例を紹介した。定期的に行う音読テストでは子どもたちの成績がアップしているといい、「こうした取り組み一つで村に変化をもたらすことができると、学生たちの自信にもつながっています」と手ごたえを話した。最後に乾教授は「支援を持続的に行い、最終的には村の自立を促すことが大切です」と強調した。


 聴講した中村瞳見さん(1年)は「私たちが普通に学べているのは当たり前ではないと気づいた。ラオスの実態を人に伝え、私も一緒に考えていきたい」と話した。中井優希さん(2年)は、「学校では、カンボジアの発展を支えるクラブで活動しており、途上国支援には興味があった。将来教師になりたいので、日本以外の教育現場の実態を知れてよかった」と振り返った。

兵庫県立大学

2004年に神戸商科大学、姫路工業大学、兵庫県立看護大学が統合して開学。姫路、神戸、明石などに9キャンパスを構える。2019年に国際商経学部、社会情報科学部を設置。6学部9学科がある。