講義リポート

横浜国立大学

いんせきからせまる生命の起源 宇宙に生物はいる?
@大分県立国東高校

癸生川 陽子

大学院工学研究院 准教授 栃木県出身/栃木県立宇都宮女子高等学校

 横浜国立大学大学院工学研究院のかわ陽子准教授は、大分県国東市の県立国東高校を訪問。「生命の起源にせまる? 宇宙における有機物の形成と進化」と題し、1年生と2年生の約130人に講義した。


 癸生川准教授はいんせきに含まれる有機物の分析が専門。生命の原材料となる有機物が地球にどうやってもたらされたかを研究している。


 最初に太陽系と人体の元素組成を比較。太陽系では水素が最も多く、ヘリウム、酸素、炭素、窒素と続く一方、人体も酸素、炭素、水素、窒素の順に構成されている点を示し、「人間や他の生き物は宇宙にありふれた元素で作られているのがわかります。おもちゃのレゴブロックを組み立てるように、宇宙の有機物が生命へとつながっていったと考えられるのです」と切り出した。


 続いて、宇宙で有機物ができた経緯を説明した。約138億年前のビッグバンで水素やヘリウムが生まれ、超新星爆発などによって炭素や窒素が星間に供給された。最も単純な糖と言えるグリコールアルデヒドや、生命誕生に重要なアミノ酸に近いアセトアミドも赤外線による観測で検出されているといい、こうした分子雲やちりなどが集まり、衝突、合体を繰り返し微惑星や小惑星ができたと紹介した。癸生川准教授は「太陽系では火星と木星の間に多くの小惑星が残りました。地球に落下する隕石のほとんどはここから来ています。太陽系の化石である隕石を調べれば、有機物の成り立ちや生命との関わりがわかるのです」と強調した。


 注目される隕石として言及したのが1969年にオーストラリアに落下したマーチソン隕石。地球外に由来するアミノ酸が初めて見つかったほか、糖類、アミン、核酸塩基などの有機物も含まれ、生命の起源を宇宙に求める説が強まる現状を説いた。また、水やアンモニアを高温で加水分解すると隕石と同様にアミノ酸が形成された実験にも触れ、「大分に多い温泉のような、ぐつぐつと沸き立った環境が、生命誕生に関係していたのかもしれません」と話した。


 癸生川准教授も初期分析に加わった小惑星探査機「はやぶさ2」にも話が広がった。「はやぶさ2」は2018年に小惑星「リュウグウ」に接近して約5.4グラムの試料を採取。2020年、地球に試料が入ったカプセルを持ち帰った。「はやぶさ2」が岩石を採取した時の動画を見せながら、「リュウグウ」には鉱物の中に水が存在し、多くの有機物が見つかっていると述べ、「世界の研究者がチームに分かれて全力で研究しています。もうすぐ結果が発表されるので期待してください」と力を込めた。


 最後に癸生川准教授が「宇宙に生き物はいると思いますか?」と生徒に質問。半数以上が手を挙げ、「最近は火星探査も盛んで、皆さんが生きている間に火星で生命の痕跡が見つかるかもしれない。好きなことを大切にして、いろいろ勉強してください」と締めた。


 聴講した糸園しゅうさん(2年)は「世界的な研究内容を聞けて面白かった。これから宇宙に簡単に行ける時代になるので、いっぱい学んで知識を活用したいです」と声を弾ませた。

横浜国立大学

1876(明治9)年発足の横浜師範学校を源流とし、1949(昭和24)年に横浜国立大学となった。教育学部、経済学部、経営学部、理工学部、都市科学部を擁し、実践性・先進性・開放性・国際性の理念のもと、実践的学術の国際拠点として「知」の創造と実践に力を入れている。

横浜国立大学

いんせきからせまる生命の起源
宇宙に生物はいる?
@大分県立国東高校

癸生川 陽子

大学院工学研究院 准教授
栃木県出身/栃木県立宇都宮女子高等学校

 横浜国立大学大学院工学研究院のかわ陽子准教授は、大分県国東市の県立国東高校を訪問。「生命の起源にせまる? 宇宙における有機物の形成と進化」と題し、1年生と2年生の約130人に講義した。


 癸生川准教授はいんせきに含まれる有機物の分析が専門。生命の原材料となる有機物が地球にどうやってもたらされたかを研究している。


 最初に太陽系と人体の元素組成を比較。太陽系では水素が最も多く、ヘリウム、酸素、炭素、窒素と続く一方、人体も酸素、炭素、水素、窒素の順に構成されている点を示し、「人間や他の生き物は宇宙にありふれた元素で作られているのがわかります。おもちゃのレゴブロックを組み立てるように、宇宙の有機物が生命へとつながっていったと考えられるのです」と切り出した。


 続いて、宇宙で有機物ができた経緯を説明した。約138億年前のビッグバンで水素やヘリウムが生まれ、超新星爆発などによって炭素や窒素が星間に供給された。最も単純な糖と言えるグリコールアルデヒドや、生命誕生に重要なアミノ酸に近いアセトアミドも赤外線による観測で検出されているといい、こうした分子雲やちりなどが集まり、衝突、合体を繰り返し微惑星や小惑星ができたと紹介した。癸生川准教授は「太陽系では火星と木星の間に多くの小惑星が残りました。地球に落下する隕石のほとんどはここから来ています。太陽系の化石である隕石を調べれば、有機物の成り立ちや生命との関わりがわかるのです」と強調した。


 注目される隕石として言及したのが1969年にオーストラリアに落下したマーチソン隕石。地球外に由来するアミノ酸が初めて見つかったほか、糖類、アミン、核酸塩基などの有機物も含まれ、生命の起源を宇宙に求める説が強まる現状を説いた。また、水やアンモニアを高温で加水分解すると隕石と同様にアミノ酸が形成された実験にも触れ、「大分に多い温泉のような、ぐつぐつと沸き立った環境が、生命誕生に関係していたのかもしれません」と話した。


 癸生川准教授も初期分析に加わった小惑星探査機「はやぶさ2」にも話が広がった。「はやぶさ2」は2018年に小惑星「リュウグウ」に接近して約5.4グラムの試料を採取。2020年、地球に試料が入ったカプセルを持ち帰った。「はやぶさ2」が岩石を採取した時の動画を見せながら、「リュウグウ」には鉱物の中に水が存在し、多くの有機物が見つかっていると述べ、「世界の研究者がチームに分かれて全力で研究しています。もうすぐ結果が発表されるので期待してください」と力を込めた。


 最後に癸生川准教授が「宇宙に生き物はいると思いますか?」と生徒に質問。半数以上が手を挙げ、「最近は火星探査も盛んで、皆さんが生きている間に火星で生命の痕跡が見つかるかもしれない。好きなことを大切にして、いろいろ勉強してください」と締めた。


 聴講した糸園しゅうさん(2年)は「世界的な研究内容を聞けて面白かった。これから宇宙に簡単に行ける時代になるので、いっぱい学んで知識を活用したいです」と声を弾ませた。

横浜国立大学

1876(明治9)年発足の横浜師範学校を源流とし、1949(昭和24)年に横浜国立大学となった。教育学部、経済学部、経営学部、理工学部、都市科学部を擁し、実践性・先進性・開放性・国際性の理念のもと、実践的学術の国際拠点として「知」の創造と実践に力を入れている。