講義リポート

群馬大学

コロナウイルスを作って解析
@愛知・名古屋経済大学市邨高校

神谷 亘

大学院医学系研究科 生体防御学分野 教授 奈良県出身/奈良県立 橿原高校

 群馬大学大学院医学系研究科の神谷亘教授は、名古屋市千種区の名古屋経済大学市邨高校を訪問。特進コース1年の58人に、「コロナウイルスを作って読み解く」と題して講義した。


 ウイルスの基礎研究者である神谷教授は、コロナウイルスを人工合成し、ウイルスがどのように増えて病気を引き起こすかを解析している。ウイルスはエネルギーの元となるアデノシン三リン酸(ATP)やたんぱく質の合成ができないため、細胞の中に入り込みそれらの機能を乗っ取って複製、増殖する。神谷教授は人工合成の際に遺伝子を操作し、ウイルスが複製されにくくなる方法があることを説明。こうした研究結果はワクチン開発にもつながっていると話した。目に見えないコロナウイルスの動きを可視化するため、実験時にはコロナウイルスに感染した細胞が緑色に光るよう遺伝子を組み換えており、そこには2008年にノーベル化学賞を受賞した故・下村脩さんが確立した技術が生かされていることも紹介した。


 また、現在世界中で報告されている変異ウイルスについて生徒に印象を尋ねた。生徒の大半が「怖い」と回答したのに対し、「ウイルスの遺伝子に必ず変異は起こりますから、変異ウイルスの出現は当然のことです。感染力や病原性が強いと言われていますが、学術的にきちんと調べないとわからないのです」と説明した。


 動物と人が感染する「人獣共通感染症」としてのコロナウイルスは、2003年のSARSコロナウイルス-1、2012年のMERS コロナウイルス、そして2019年末から広がった新型コロナウイルス(SARS コロナウイルス-2)の他にも存在しているとし、これまで鳥類のみに感染が見られたδ(デルタ)コロナウイルスが、種差を超えて哺乳類の豚にも感染が確認された最近の事例を紹介。今後新たに起こる感染症のほとんどが、人獣共通感染症によってもたらされると見通した。


 最後に、未来を担う若手のウイルス研究者の誕生に期待を寄せた。「ウイルスを専門とする研究者はたくさんいますが、その中でもコロナウイルスはマイナーな分野です。今日、講義を聴いてくれた皆さんの中から出てくればすごくハッピーです」と生徒に呼びかけ、「群馬は遠いかもしれませんが、研究室の見学希望者がいたら歓迎します。緑に光った細胞を皆さんにも見てもらいたいです」と締めくくった。


 講義を受けた向山和音むこうやまかずねさんは「コロナウイルスの研究で、ノーベル賞の技術が活用されていると知り新鮮だった。科学技術はつながっているのだなと感じた」と感想を話した。大地孝汰さんは「ニュースで知る限り、変異ウイルスは危険な印象があったが、今日の講義で実態がわかった。家族にも教えたい」と振り返った。

群馬大学

群馬師範学校、前橋医科大学などを包括し、1949年開学。共同教育、社会情報、医、理工の4学部。2021年4月に新設される情報学部では、人文情報、データサイエンスなど文理融合の教育を展開する。

群馬大学

コロナウイルスを作って解析
@愛知・名古屋経済大学市邨高校

神谷 亘

大学院医学系研究科 生体防御学分野 教授
奈良県出身/奈良県立 橿原高校

 群馬大学大学院医学系研究科の神谷亘教授は、名古屋市千種区の名古屋経済大学市邨高校を訪問。特進コース1年の58人に、「コロナウイルスを作って読み解く」と題して講義した。


 ウイルスの基礎研究者である神谷教授は、コロナウイルスを人工合成し、ウイルスがどのように増えて病気を引き起こすかを解析している。ウイルスはエネルギーの元となるアデノシン三リン酸(ATP)やたんぱく質の合成ができないため、細胞の中に入り込みそれらの機能を乗っ取って複製、増殖する。神谷教授は人工合成の際に遺伝子を操作し、ウイルスが複製されにくくなる方法があることを説明。こうした研究結果はワクチン開発にもつながっていると話した。目に見えないコロナウイルスの動きを可視化するため、実験時にはコロナウイルスに感染した細胞が緑色に光るよう遺伝子を組み換えており、そこには2008年にノーベル化学賞を受賞した故・下村脩さんが確立した技術が生かされていることも紹介した。


 また、現在世界中で報告されている変異ウイルスについて生徒に印象を尋ねた。生徒の大半が「怖い」と回答したのに対し、「ウイルスの遺伝子に必ず変異は起こりますから、変異ウイルスの出現は当然のことです。感染力や病原性が強いと言われていますが、学術的にきちんと調べないとわからないのです」と説明した。


 動物と人が感染する「人獣共通感染症」としてのコロナウイルスは、2003年のSARSコロナウイルス-1、2012年のMERS コロナウイルス、そして2019年末から広がった新型コロナウイルス(SARS コロナウイルス-2)の他にも存在しているとし、これまで鳥類のみに感染が見られたδ(デルタ)コロナウイルスが、種差を超えて哺乳類の豚にも感染が確認された最近の事例を紹介。今後新たに起こる感染症のほとんどが、人獣共通感染症によってもたらされると見通した。


 最後に、未来を担う若手のウイルス研究者の誕生に期待を寄せた。「ウイルスを専門とする研究者はたくさんいますが、その中でもコロナウイルスはマイナーな分野です。今日、講義を聴いてくれた皆さんの中から出てくればすごくハッピーです」と生徒に呼びかけ、「群馬は遠いかもしれませんが、研究室の見学希望者がいたら歓迎します。緑に光った細胞を皆さんにも見てもらいたいです」と締めくくった。


 講義を受けた向山和音むこうやまかずねさんは「コロナウイルスの研究で、ノーベル賞の技術が活用されていると知り新鮮だった。科学技術はつながっているのだなと感じた」と感想を話した。大地孝汰さんは「ニュースで知る限り、変異ウイルスは危険な印象があったが、今日の講義で実態がわかった。家族にも教えたい」と振り返った。

群馬大学

群馬師範学校、前橋医科大学などを包括し、1949年開学。共同教育、社会情報、医、理工の4学部。2021年4月に新設される情報学部では、人文情報、データサイエンスなど文理融合の教育を展開する。