講義リポート

弘前大学

焼き畑を農業の未来考えるヒントに
@大阪・天王寺高校

杉山 祐子

人文社会科学部文化財論講座 教授 東京都出身/東京都立 西高等学校

 弘前大学人文社会科学部の杉山祐子教授は、大阪府立天王寺高校(大阪市阿倍野区)の1~2年生14人に、「焼畑で森林がなくなるの? 環境と暮らしの持続性をアフリカ農村から考える」と題してオンラインで講義した。


 杉山教授は生態人類学が専門。まず、生態人類学が、異文化の調査地に住み込んで人々の活動にまぜてもらい、体験しながら観察・記録し、当事者と外部の目から見たことを交差させることで、人の文化や社会、コミュニケーションについて考える学問であることを説明した。


 そのうえで1983年からアフリカのザンビア北東部の焼き畑で生活している農村に住み込み、村人の活動に加わって実施したフィールド調査を紹介。焼き畑には木を切って燃やし、森林を破壊するイメージがあるが、「焼き畑は有機物を集めて焼くことで痩せた土地に有機物を補い、除草や害虫除去の効果があり、限られた面積で多様な作物ができる畑が作れる。そのうえ、林の早い再生も環境全体に働きかける活動であることがわかった」と説明した。


 また、焼き畑で伐採を繰り返すことで、こんもりとした木の林になり、林が再生する中で様々な植物が生え、動物もすむようになり、それらが食料にもなることを紹介。「村人が林の中の食用昆虫や林産物を現金収入源にしながら、林の再生に合わせて焼き畑の場所を30年くらいで循環させて、自分たちの生活を安定的で豊かに維持してきた」と焼き畑の特徴を評価した。


 一方で、近年、外部企業による大規模開発が進み、政府も再生中の林や休閑地を「使っていない土地」と認定し、共同で使っていた林を個人のものにできるように法を改正した。その結果、林が劣化して土地が荒れ、土地を買えない村人が出稼ぎ労働者となってきたことも紹介。そうした状況だけに、自然の再生産リズムを生かした焼き畑の環境とのつきあい方が近代農業の未来を考えるヒントになり、暮らしの持続性をみすえたSDGs(持続可能な開発目標)の道にもつながることを強調した。


 生徒からは「焼き畑は枝を燃やして二酸化炭素が出るので、その影響は」などの質問があり、杉山教授は「(紹介した)焼き畑で出る二酸化炭素は小規模。燃えなかったところの林が再生する過程で、むしろ二酸化炭素が取り込まれる可能性がある」と答えていた。また、「焼き畑が環境に寄り添った方法であることを初めて知った」などの感想も聞かれた。

弘前大学

1949年に新制大学として発足。人文社会科学、教育、医、理工、農学生命科学の5学部(4課程14学科)からなる。再生可能エネルギー、環境、被ばく医療、食の4テーマを重点分野に位置づける。

弘前大学

焼き畑を農業の
未来考えるヒントに
@大阪・天王寺高校

杉山 祐子

人文社会科学部文化財論講座 教授
東京都出身/東京都立 西高等学校

 弘前大学人文社会科学部の杉山祐子教授は、大阪府立天王寺高校(大阪市阿倍野区)の1~2年生14人に、「焼畑で森林がなくなるの? 環境と暮らしの持続性をアフリカ農村から考える」と題してオンラインで講義した。


 杉山教授は生態人類学が専門。まず、生態人類学が、異文化の調査地に住み込んで人々の活動にまぜてもらい、体験しながら観察・記録し、当事者と外部の目から見たことを交差させることで、人の文化や社会、コミュニケーションについて考える学問であることを説明した。


 そのうえで1983年からアフリカのザンビア北東部の焼き畑で生活している農村に住み込み、村人の活動に加わって実施したフィールド調査を紹介。焼き畑には木を切って燃やし、森林を破壊するイメージがあるが、「焼き畑は有機物を集めて焼くことで痩せた土地に有機物を補い、除草や害虫除去の効果があり、限られた面積で多様な作物ができる畑が作れる。そのうえ、林の早い再生も環境全体に働きかける活動であることがわかった」と説明した。


 また、焼き畑で伐採を繰り返すことで、こんもりとした木の林になり、林が再生する中で様々な植物が生え、動物もすむようになり、それらが食料にもなることを紹介。「村人が林の中の食用昆虫や林産物を現金収入源にしながら、林の再生に合わせて焼き畑の場所を30年くらいで循環させて、自分たちの生活を安定的で豊かに維持してきた」と焼き畑の特徴を評価した。


 一方で、近年、外部企業による大規模開発が進み、政府も再生中の林や休閑地を「使っていない土地」と認定し、共同で使っていた林を個人のものにできるように法を改正した。その結果、林が劣化して土地が荒れ、土地を買えない村人が出稼ぎ労働者となってきたことも紹介。そうした状況だけに、自然の再生産リズムを生かした焼き畑の環境とのつきあい方が近代農業の未来を考えるヒントになり、暮らしの持続性をみすえたSDGs(持続可能な開発目標)の道にもつながることを強調した。


 生徒からは「焼き畑は枝を燃やして二酸化炭素が出るので、その影響は」などの質問があり、杉山教授は「(紹介した)焼き畑で出る二酸化炭素は小規模。燃えなかったところの林が再生する過程で、むしろ二酸化炭素が取り込まれる可能性がある」と答えていた。また、「焼き畑が環境に寄り添った方法であることを初めて知った」などの感想も聞かれた。

弘前大学

1949年に新制大学として発足。人文社会科学、教育、医、理工、農学生命科学の5学部(4課程14学科)からなる。再生可能エネルギー、環境、被ばく医療、食の4テーマを重点分野に位置づける。