講義リポート

兵庫県立大学

数理モデルで世界の将来を予測
@愛知・瑞陵高校

川嶋 宏彰

社会情報科学部 教授 兵庫県/兵庫県立 長田高校

 兵庫県立大学社会情報科学部の川嶋宏彰教授は、名古屋市瑞穂区の愛知県立瑞陵高校を訪問し、普通科コスモサイエンスコースの2年生40人に講義した。テーマは「機械学習やモデル化って何?~言語・非言語情報を扱うためのモデル化技術~」。


 川嶋教授はまず、等速運動といった物理の基本法則をはじめ、台風の予測、銀河の形成や進化など、現実の様々な事象は数式を使った「数理モデル」で表せると話した。SNSでフェイクニュースがどのように伝わるかなど、社会科学分野にも応用ができるという。さらに「数理モデルがあると、現実世界の将来を理論的に予測できます。数理モデルをもとにプログラムを組めば、次に何が起こるかシミュレーションできます」と言い、実例として感染症の流行予測などを用いながら説明した。


 「人の知能とモデル化」についても話題を展開した。「例えば、写真の中の自分や相手の顔をどのように識別したかなど、人が無意識に行っている知能に関する処理の多くは、モデル化するのは難しい」とした一方で、人の知能や認知の分野にもかかわる画像認識や音声認識、自動翻訳などの精度は現在、格段に上がっていると指摘。その要因として人工知能分野の発展、その中でも大量のデータからコンピューターがモデルを自動で学習する「機械学習」や、より複雑なモデルを学習できる「深層学習」の進化を挙げ、その仕組みを説明した。機械学習を試せるサイトを使って生徒の顔をコンピューターに認識、学習させ、顔の違いを判別させる実演も行った。


 さらに人物映像から関節の位置を推定、表示する技術や、入力した画像のシーンがどのようなものかを自動で記述、説明する技術を紹介し、「分断されていた音声や言語、画像などの各専門分野が、機械学習という共通項でつながってきています」と人工知能の最新トレンドを説明。線形代数、微分積分、確率・統計といった高校数学で得られる基礎知識は、機械学習や深層学習の分野でフルに活用されると話し、高校時代の学びの重要性を強調した。最後に「今、機械学習は多くの学問分野と結びついています。皆さんが今後進む道の先でも、きっと出あうでしょう」と結んだ。


 聴講した澤田柚香さんは「興味がある建築学も、機械学習との掛け合わせで新しい世界が広がるかもしれない。今日の話はずっと覚えておく」と感想を話した。松田尋翔ひろとさんは「パソコンで音楽を作るのが趣味。メロディーに合わせてベース音やコードを自動生成するソフトや、歌詞まで作ってくれるソフトもある。今日の講義とつながることが多く、興味深かった」と振り返った。

兵庫県立大学

2004年に神戸商科大学、姫路工業大学、兵庫県立看護大学が統合して開学。姫路、神戸、明石などに9キャンパスを構える。19年に国際商経学部、社会情報科学部を設置。6学部9学科がある。

兵庫県立大学

数理モデルで世界の将来を予測
@愛知・瑞陵高校

川嶋 宏彰

社会情報科学部 教授 兵庫県/兵庫県立 長田高校

 兵庫県立大学社会情報科学部の川嶋宏彰教授は、名古屋市瑞穂区の愛知県立瑞陵高校を訪問し、普通科コスモサイエンスコースの2年生40人に講義した。テーマは「機械学習やモデル化って何?~言語・非言語情報を扱うためのモデル化技術~」。


 川嶋教授はまず、等速運動といった物理の基本法則をはじめ、台風の予測、銀河の形成や進化など、現実の様々な事象は数式を使った「数理モデル」で表せると話した。SNSでフェイクニュースがどのように伝わるかなど、社会科学分野にも応用ができるという。さらに「数理モデルがあると、現実世界の将来を理論的に予測できます。数理モデルをもとにプログラムを組めば、次に何が起こるかシミュレーションできます」と言い、実例として感染症の流行予測などを用いながら説明した。


 「人の知能とモデル化」についても話題を展開した。「例えば、写真の中の自分や相手の顔をどのように識別したかなど、人が無意識に行っている知能に関する処理の多くは、モデル化するのは難しい」とした一方で、人の知能や認知の分野にもかかわる画像認識や音声認識、自動翻訳などの精度は現在、格段に上がっていると指摘。その要因として人工知能分野の発展、その中でも大量のデータからコンピューターがモデルを自動で学習する「機械学習」や、より複雑なモデルを学習できる「深層学習」の進化を挙げ、その仕組みを説明した。機械学習を試せるサイトを使って生徒の顔をコンピューターに認識、学習させ、顔の違いを判別させる実演も行った。


 さらに人物映像から関節の位置を推定、表示する技術や、入力した画像のシーンがどのようなものかを自動で記述、説明する技術を紹介し、「分断されていた音声や言語、画像などの各専門分野が、機械学習という共通項でつながってきています」と人工知能の最新トレンドを説明。線形代数、微分積分、確率・統計といった高校数学で得られる基礎知識は、機械学習や深層学習の分野でフルに活用されると話し、高校時代の学びの重要性を強調した。最後に「今、機械学習は多くの学問分野と結びついています。皆さんが今後進む道の先でも、きっと出あうでしょう」と結んだ。


 聴講した澤田柚香さんは「興味がある建築学も、機械学習との掛け合わせで新しい世界が広がるかもしれない。今日の話はずっと覚えておく」と感想を話した。松田尋翔ひろとさんは「パソコンで音楽を作るのが趣味。メロディーに合わせてベース音やコードを自動生成するソフトや、歌詞まで作ってくれるソフトもある。今日の講義とつながることが多く、興味深かった」と振り返った。

兵庫県立大学

2004年に神戸商科大学、姫路工業大学、兵庫県立看護大学が統合して開学。姫路、神戸、明石などに9キャンパスを構える。19年に国際商経学部、社会情報科学部を設置。6学部9学科がある。