優秀賞

優秀賞 重松楽々、河原羽夢(愛媛県立長浜高等学校)

重松楽々、河原羽夢
(愛媛県立長浜高等学校)
クラゲ予防クリーム「JELLY’S GUARD」の開発

動物科学

 イソギンチャクやクラゲの仲間(刺胞動物)は、刺胞と呼ばれる、ミクロの毒針を持っています。本校の先行研究で、ハタゴイソギンチャクやユウレイクラゲは、Mg2+濃度が高いと刺胞を射出しないことや、ミズクラゲの幼生は、Ca2+濃度が低いと刺胞を射出することがわかっていました。そこで、Ca2+がクラゲの刺胞射出を抑制するかを検証し、日焼け止めクリームに高濃度のMg2+とCa2+を配合することで、クラゲの刺胞を防御するクリームを開発したいと考えました。また、クリームに配合するMg2+とCa2+の最適濃度比率も明らかにしようしました。

優秀賞 岡野美聡(埼玉県立川越女子高等学校)

岡野美聡
(埼玉県立川越女子高等学校)
朝顔の開花の研究 ~光と水、花弁の気孔の開花における役割~

植物科学

 花びらの水の通り道を調べるため、つぼみにいろいろな切込みを入れたところ、茎から吸った水は曜からスジを横切って全体に行き渡ることがわかりました。5種類の波長の違う光をつぼみに照射した実験で、660nm(赤色)と730nm(遠赤色)は開花を阻害し、気孔の開孔率は40%以下でした。青、緑、黄の光には阻害されず開花し、55%以上の気孔が開きました。、660nmと730nmの両波長に反応する事はフィトクロムAが光受容体であることを示しています。また気孔をふさぐワセリンの実験と気孔を不可逆的に開かせるフシコクシン(カビ由来の化合物)の実験から、開花に気孔が関わること、つぼみの重さの20%の水を吸い上げ、水含量の増加が必要だとわかりました。

優秀賞 横屋稜(横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校)

横屋稜
(横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校)
キンシャチの維管束は水を効率よく吸収するために工夫されている
~キンシャチのサバイバル術~

植物科学

 サボテンは一般的にナデシコ目のサボテン科に属する双子葉植物です。しかし見た目はまるで違います。なぜサボテンはこのような形態に進化したのかを、サボテンの内部を調べることにより解明したいと考え研究を行いました。その結果、まずサボテンでも双子葉植物と同じように輪形状の維管束を持つことが確認できました。そして、刺の付け根(刺座)まで、水平方向で放射線状に伸びている道管が存在することが分かりました。次にこの刺座から水が吸収され、道管を通って中心部へ移動する様子を発見しました。

優秀賞 西林伶華(東京大学教育学部付属中等教育学校)

西林伶華
(東京大学教育学部付属中等教育学校)
ゼニゴケの再生能力

植物科学

 コケ植物のひとつであるゼニゴケの再生メカニズムの解明を試みました。ゼニゴケの部位ごとの再生能力を調べていると、成長点というゼニゴケの先端にある組織を持っているかいないかで、再生後のゼニゴケの形に変化があることに気がつきました。この現象に着目して、ゼニゴケの再生メカニズムを調べるための実験をした結果、成長点は新しい成長点の形成や無性生殖に使われる無性芽の発芽の抑制をしていることなどが考えられました。植物が進化する過程で、維管束を持たないゼニゴケでも精密な成長の仕組みをもっていることが考えられました。

優秀賞 川村ヒカル(仁川学院高等学校)

川村ヒカル
(仁川学院高等学校)
金コロイドを用いた、システインの定量

化学

 金の赤色コロイドにシステイン水溶液を入れると、色が赤から紫に変わります。この性質を利用し、金コロイドでシステインが定量できないかと考えました。色の変化の度合いを測定して検量線を引くと、直線性の高いものが得られました。その検量線を用いて市販の医薬品中のシステインを定量すると、表示量とほぼ同じシステイン量が測定されました。また、セロハン膜でシステインと塩化物イオン、ナトリウムイオンを透析し、定量して比較したところ、粒子の大きいシステインが他の小さい2イオンよりも遅くセロハン膜を通過する様子も測定できました。以上の実験から、金コロイドを用いた、システインの新しい定量法が開発できました。

優秀賞 仁戸田拓己、大石芽吹(千葉県立船橋高等学校)

仁戸田拓己、大石芽吹
(千葉県立船橋高等学校)
典型金属イオンが与える色素の光分解への多種多彩な影響

化学

 金属元素と言われる元素の中で「典型金属元素」は、私達の周りに多く存在し、身近なものと言えます。典型金属イオンは他の物質に対して遷移元素のような複雑な影響を与えることは少ないのですが、私達の研究では、この典型金属イオンが「光が当たると有機物である色素が分解される現象」に多様な影響を与えることがわかりました。「多様な影響」とは、典型金属イオンが色素を守るだけでなく、壊す方にも働いたり、pHや金属イオンの値数、共存する酸化剤の種類によって影響の仕方が変わったりする、ということです。この研究を応用すると、身近な典型金属元素によって染色した布等の色あせ防止や、有害な有機物の分解に応用できると考えています。

優秀賞 高沢瑞希(宮城県宮城第一高等学校)

高沢瑞希
(宮城県宮城第一高等学校)
簡単で綺麗な銅鏡の生成条件

化学

 銀鏡反応はガラス表面に鏡をつくる反応であり、銅鏡反応は銀鏡反応のようにガラス表面に銅の薄い膜が生じる反応のことです。しかし、この反応は銀鏡反応よりも起こりにくいです。その理由は、銅は銀よりも還元されにくいのと同時に、反応がガラス表面で起こりにくいからです。そこで、試験管の内側に参加チタンをコーティングすることによって、銅鏡反応が起こりやすくなりました。

優秀賞 柴田陶子、佐藤綺海、高橋優太(秋田県立秋田高等学校)

柴田陶子、佐藤綺海、高橋優太
(秋田県立秋田高等学校)
香料シトラールの突然変異抑制機構に関する構造の解析

細胞・分子生物学

 私たちの住む秋田県では、消化器系のがんによる死亡率が高いことが問題となっています。そこで、食品に幅広く用いられている香料の中から細胞のがん化の一因である遺伝子突然変異を抑制する効果を持つ物質を探索することで、人々の健康の維持増進に貢献したいと考えました。私たちはこれまでの研究で、レモンの香料物質「シトラール」には過酸化水素による遺伝子突然変異を抑制する効果があること、その効果にはアルデヒド基と2位のC-C間二重結合を持つことが必須であることを発見しています。今回は、シトラールの遺伝子突然変異抑制効果は、この二つの構造に加え、3位のメチル基を持つことに起因することを明らかにしました。

優秀賞 戸川祐太、藤川綾弥、城晴道(岡山理科大付属高等学校)

戸川祐太、藤川綾弥、城晴道
(岡山理科大付属高等学校)
香料シトラールの突然変異抑制機構に関する構造の解析

微生物学

 スギは長寿で日本固有の重要な木材資源であり、神木として祀られてもいます。いったい、スギの生体防御はどうなっているのか興味をもちました。本研究では、細菌や菌類を餌にしている樹皮生粘菌による生物学的防御を検討しました。樹木の太さと活力度(樹勢)の段階ごとに、樹皮を採集し水で湿して培養を行いました。樹皮からの浸出液のpHと電気伝導度を測定し、発生した粘菌の子実体を顕微鏡で調べ、種を同定しました。 その結果、活力度の低下や大型化で、樹皮pHが高くなり、電気伝導度が低くなる傾向が見られ、優占する粘菌の種が異なりました。健全で若い樹幹には特定の粘菌が常在し、生物学的防御にかかわっている可能性が考えられました。

優秀賞 杉原悠太、石川陽、山中孝太郎(名古屋大教育学部付属高等学校)

杉原悠太、石川陽、山中孝太郎
(名古屋大教育学部付属高等学校)
気象衛星の画像解析から求めた地球と月の軌道

物理学・天文学

 気象衛星ひまわり8号の画像には、太陽と月の位置に関する情報が含まれていました。1日に2回、気象衛星から見て地球のちょうど半分に太陽光が当たる瞬間があります。この影の傾きは地軸の公転面に対する傾きを表し、地軸の傾きの時間変化から地球の軌道速度の変化が分かります。3年分の軌道速度の変化を解析し、地球の軌道離心率と公転周期、地軸の傾きを高い精度で求めることができました。また、ひまわり8号の運用後、2016年3月9日の皆既日食という貴重な機会を生かして月の軌道速度を解析できました。さらに、インターネット望遠鏡を用いた月の継続観測を行い、近点月と月の軌道離心率、軌道長半径を解析し、月の軌道を求めることができました。

優秀賞 谷川まゆ、高山凜、佐野くるみ(新潟県立新潟中央高等学校)

谷川まゆ、高山凜、佐野くるみ
(新潟県立新潟中央高等学校)
縞々模様から解き明かす太古の波

地球・環境科学

 私達が研究したのは、地元にある地層に見られる水流の跡を示す縞々模様(ラミナ)で、地層の堆積した当時の環境(水流)を探ることが研究の目的です。当時の環境を探るために、自作の水槽実験装置で、表面の波と水中で動く波を再現して縞々模様(ラミナ)をつくり、当時の波がどのようであったかを推定しました。

優秀賞 秋山実希(秋田県立秋田中央高等学校)

秋山実希
(秋田県立秋田中央高等学校)
秋田平野のため池における水生植物の生態と保全に関する研究

地球・環境科学

 秋田平野の丘陵地に分布し、貴重な水生植物が記録されているため池を対象に、水生植物の分布と環境条件との関わりを調べました。ため池にはハスなどの浮葉植物が多くみられ、沈水植物の分布は限られていました。調査の結果から、水の底に泥がたまり、酸素の少ない条件になったことが沈水植物の衰退要因のひとつと考えられました。一方、魚類の胃の中からは沈水植物の葉や種は確認されず、魚類は沈水植物の衰退に影響を与えないことが示されました。さらに埋土種子の調査から、水底の泥の中にかつて生息していた植物の種子が眠っていることがわかりました。ため池の環境を改善するためには、水底に眠る種子を活用することや、水底の泥を除去することが必要だと考えます。

優秀賞 渋沢賢(東京工業大付属科学技術高等学校)

渋沢賢
(東京工業大付属科学技術高等学校)
剣道における有効打突判定システムの開発

組み込みシステム

 本研究では実際に剣道の試合に導入できるような組み込みシステムを開発し、それを装着した状態で打突と試合を行うことで、今回製作したシステムの有用性を検証しました。実験したところ、打突に対する反応率は65.5%でした。また、試合を行う実験ではシステムによって審判が判断できることが分かりました。システムには未だ有効打突の判定に対し、正確性に欠け、現在の状態では実際の試合に導入するにはコードなどの問題点が多いことが明らかになりました。しかし、システムの構造は、有効打突への視認性の向上による誤審の減少が望めることが分かりました。

優秀賞 池辺龍(東京都立戸山高等学校)

池辺龍
(東京都立戸山高等学校)
ネジを用いた昇降機による、ゴムの伸びに対する張力変化の観察及び考察

材料科学

 ばね状という特徴的な構造を持たずに、極めて高い弾性率(伸び縮みする力)を持つゴムの、能力の仕組みに迫りました。全自動で物体を伸ばし、その弾力を正確に測定する装置を作成し、まず、ゴムの伸びはばねとどう違うのか、あるいは同じなのかを調べました。すると、ゴムにおいてのみ張力-伸びグラフが曲線になり、ゴムを伸ばしてから停止させると徐々に張力が低下し、縮めてから停止させると徐々に張力が増加するという現象が、それぞれ短時間のうちに見られました。そこで、それぞれを「山崩れ現象」「谷隆起現象」と命名し、原因として 1)ゴム分子の整列の遅れ 2)熱のやり取り の2つの仮説を立て、追加実験にて矛盾のないことを確かめました。

優秀賞 皆葉あかり(茗溪学園高等学校)

皆葉あかり
(茗溪学園高等学校)
バレエが足に与える負担とその解決方法 ~動きの着地、筋力、骨盤前傾から探る~

生体医工学

 私は、ジャンプ、骨髄前傾という2つの視点から研究を進めました。まず、動画からジャンプの着地に要する時間を単体ジャンプと連続ジャンプ、音楽ありと音楽なしで比較し、音楽ありの連続ジャンプで着磁時間が短いとわかりました。次に、筋力計を用いて骨盤を前傾させる筋群の能力を測定し、質問紙調査と筋力から、怪我の経験と筋力の関連性を探り、怪我の経験がある人の筋力が低いと分かりました。その後、筋力トレーニングを考案し、効果を調査したところ筋力の向上が見られました。私は、これらの実験、調査からジャンプの怪我の解決方法として、骨盤前傾による床反力の利用、アキレス腱のストレッチ、ゴムバンドを用いた筋力トレーニングを提案します。

優秀賞 円山夏生(津山工業高等専門学校)

圓山夏生
(津山工業高等専門学校)
群の作用で不変なグラフの閉曲面への埋め込みの研究

数学

 ノード(頂点)とエッジ(辺)の集合で構成されたものをグラフとよびます。また、閉曲面は種数で分類できることが知られています。種数とは一人乗りの浮き輪なら1で、二人乗りの浮き輪なら2という数のことです。任意のグラフをエッジが交差することのないように閉曲面に埋め込むとき、その閉曲面の最低種数を求める公式は見つかっていません。私は対称性を持つグラフに限れば、埋め込む閉曲面の種数公式が発見できるのではないかと考えて研究しています。

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