優秀賞
佐藤潤苑
(横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校)
根で光合成を行うラン科植物はどのように気体を交換しているのか
植物科学
キロスキスタやクモランは、根を樹木に張り付けて生息するラン科植物です。また、葉を持たずに緑色の根で光合成しています。気孔がないので、根で気体のやり取りをしているそうですが、不明な点が多いです。そこで私は、根を色水の中に入れて減圧し、気体の通る道に色水を通して可視化させるという実験系を開発しました。その結果、キロスキスタの根の細胞が斑点状に染まりました。このことから、キロスキスタは気体を吸収しやすい特別な細胞を通して、気体を根の全体へ輸送しているのではないかと考察しました。また、実際に生息している環境を知るために、日本に自生しているクモランの探索も行いました。観察したところ、光合成に有利な場所に着生しているとわかりました。
杉山賢大、塚本夏美、内山友斗
(静岡県立掛川西高等学校)
空中胞子DNA検出によるキノコの種の判別と生育域調査
植物科学
空気中には目には見えない様々な小さい粒子が浮遊しています。私たちの研究は、これら粒子のうち、キノコが放出する「胞子」を空気中から集め、そのDNAを検出することで、その地域にキノコが生育しているかどうかを明らかにしようというものです。研究を進めていく中で、私たちの確立したキノコのDNA検出方法は、キノコの生育の有無だけでなく、どのような種がそこに生育しているかまで特定できる可能性が高いことが分かりました。この技術を用いて静岡県や山梨県の山中で空気を集め、野外調査を行うことで、ブナシメジや、希少なキノコであるマツタケを発見することに成功しました。今後はさらに研究を進め、キノコの生態についても解明していきたいです。
本田千紗
(仁川学院高等学校(兵庫県))
アルコールランプの科学ーメタノールのきれいな燃焼
化学
アルコールランプの燃料はメタノールです。メタノールが燃えると、水と二酸化炭素の他に、ホルムアルデヒド、ギ酸、二酸化窒素のような有害なものができます。特にホルムアルデヒドが有害です。私はメタノールを完全に燃焼させて、有害物質が少なくなるような燃やし方の工夫を行いました。13通りの燃やし方を試してみた結果、茶こしを炎の上に置いた場合、ホルムアルデヒドが3分の1にまで減らすことができることを見つけました。アルコールランプは防災用の調理用品や暖房用にまだまだ使うことができます。
花村佳緒
(玉川学園高等部(東京都))
塩基性条件下のアントシアニンの変色原因を探る
化学
紫キャベツ液に含まれるアントシアニンは酸性では赤、中性では紫、塩基性では緑に変色するという特徴がありますが、そのまま放置しておくと、塩基性条件下のアントシアニンのみが緑から黄色へと更に変色するという現象に気が付き、その原因を調べるために研究を行いました。その結果、この変色には酸化が関わっていることがわかりました。紫キャベツ液中には、複数のアントシアニンが存在します。アントシアニンは種類ごとに安定性が異なります。そのため、塩基性で青色になったアントシアニンが時間差で酸化されていき、酸化されると黄色くなります。よって、全体の色は、青から緑、そして黄色へと、順番に変化していくように見えたのだとわかりました。また、塩基性のアントシアニンは、酸性や中性のものより不安定なため、塩基性のときだけこのような現象が起こることもわかりました。
仲村康平、大野友暉
(千葉県立千葉東高等学校)
うがい薬中の遊離ヨウ素の物質量はなぜ変化するのか?
化学
ヨウ素が活用されている身近なものにうがい薬があります。私たちはこのうがい薬にヨウ素が含まれているならヨウ素液の代用として用いることができる、と考え実験に用いたところ、ヨウ素液の場合とは異なる結果が得られました。どうして結果が異なるのかその原因を探り、仮説を立てながら立証を試みました。最終的にうがい薬にはヨウ素以外にポピドンという物質が含まれていることより、水で希釈されることでそのポピドンとヨウ素が結合したり離れたりして、ヨウ素の量が変化するのだと考えました。水で希釈するとなぜヨウ素がくっついたり離れたりするのか、そのメカニズムについても考えました。
橘幸之介、安藤詩織、水野莉央
(愛知県立一宮高等学校)
銀鏡反応を応用した無電解銅めっきの研究
化学
現在の不導体への銅めっきの方法では、コストが掛かる上に廃液処理に課題があります。特にABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂の表面処理に使用されるクロム酸や、銅を析出させる際の還元剤として使用されるホルムアルデヒドは環境や人体への負荷が問題となっています。それを解決しようと思いから研究を始めました。私たちは、クロム酸を用いなくてもABS樹脂を濃硝酸で20分処理をするとブタジエンが抜けて孔ができることを発見しました。さらに、ホルマリン使用せずともアスコルビン酸ナトリウムを還元剤として使用できることを見つけました。これらを用いることで無電解で銅めっきされ、電気抵抗率も約1.02 Ωとなりました。そしてこの研究は、IT化が進む現在電子回路の小型化にも応用できそうであることがわかりました。
中川鈴彩
(立命館慶祥高等学校(北海道))
北海道美瑛に所在する「青い池」の青白色の生成場所と光学的・化学的性質の調査
化学
北海道美瑛町に所在する「青い池」という、神秘的な青白色で観光スポットとして有名な砂防堰堤があります。青い池とそれに流入する河川水・温泉水を光学的・化学的手法を用いて、不透明な青白色の生成場所とその性質を調査しました。青白色のうちの白色は可視光の波長より大きい粒子による散乱で、青色は水自体の青さと可視光の波長より小さい粒子による、波長の短い光からされる散乱による青です。青い池には美瑛川の水が流入しており、その支流である硫黄沢川には温泉水が流入しています。この研究で硫黄沢川に流入する温泉水が青い池の色の原因であることがわかりました。また、その温泉水は塩基性であり、硫化水素や二酸化硫黄、硫黄の単体は含まれていないことがわかりました。
泉拓甫、大西勝文、福田吉孝
(大阪桐蔭高等学校(大阪府))
中赤外線によるエチレンガスの濃度測定とバイオマスの熱分解によるエチレンの発生と測定
化学
樹木などのバイオマスを熱分解するとエチレンガスが発生し、ガスクロマトグラフィーという方法で分析を行います。エチレンガスが3.2~3.4μmの中赤外線を吸収することから、赤外線センサーを用いて濃度測定ができないかを研究しました。2cmの短い吸収管で、光漏れを防ぐ黒いテープで保護することにより、赤外線でエチレンの濃度を測定することが出来ました。この結果、ガスクロマトグラフィーよりも安価で、大幅に短い時間でエチレンの濃度を測定できるようになりました。また、紙を作る際に生じる廃液の黒液は現在、燃やして火力発電に使われています。黒液を有効活用できないかと考え、黒液を熱分解することによりエチレンを発生させました。発生したエチレンは赤外線を用いて濃度測定を行いました。
沼田菜雪、三宅貴大
(埼玉県立川越南高等学校)
物理的環境が似た土壌でも人間の日常的な活動によって細菌集団の機能が大きく変わる
微生物学
私たちは普段から土の上で生活していますが、人間の活動が土の細菌にどんな影響を与えるのか、わかっていませんでした。そこで私たちは、身近な土である学校の中庭の土とテニスコートの土を調べて、私たち人間がそれぞれの土の中の細菌に与える影響を調べました。中庭の土は人間が普段から手入れをしている土で、テニスコートの土は人間がその上で激しく運動している土です。この2つの土の様子を調べた結果、中庭のような人間が手入れをした土の細菌は、細菌にとって良い環境でよく増えること、また、テニスコートのような激しく活動する土の細菌は、細菌にとって厳しい環境で増えることができる可能性が高いことがわかりました。このことから、人と土との関わり方によって土の中の細菌の機能が大きく変わることがわかりました。
藤本瑞士、上原昂大、今村美咲
(札幌日本大学高等学校(北海道))
外部電源なしで金属パイプの抵抗率を測定する方法
物理学・天文学
金属パイプ中を落下する磁石の速度を表す理論式が、Y. Levinらによって報告されています。その理論式から、磁石の落下速度と磁石の磁気モーメントがわかれば、金属パイプの抵抗率を求めることができます。磁石の磁気モーメントについては、本校科学部の5年間にわたる継続研究によって、磁石間に働く磁気力と磁石間距離の関係から求められることがわかっています。もし、この研究に成功すれば、高価な測定装置を購入する必要もなく、また外部電源なしで抵抗率を、ネオジム磁石とスマートフォンを用いて簡単に測定できるようになります。この測定方法は、外部からは目に見えないパイプ内の損傷個所を落下速度から特定できるといった、非破壊検査にも応用することができます。
横山輝海
(広島県立府中高等学校)
コイルによる金属や非金属の厚さ測定~はく検電器用アルミ箔の厚さ測定を目指して~
物理学・天文学
アルミパイプ内を落下する磁石はアルミが厚いほど落下速度が小さくなります。この現象をヒントに、私は磁場を利用して金属の厚さを測定できると考え、特にはく検電器に使われるアルミ箔(「はく検箔」)のような、マイクロメーターでも測れないほど薄い金属箔の厚さ測定を目的として研究に取り組みました。そして、交流電流を流しているコイルを金属に接するとインダクタンスというコイルの性質が変わることを利用してはく検箔の厚さを求めることができました。またこの実験方法は非金属物質の厚さ測定にも利用できることがわかりました。
細田廉
(広島県立安古市高等学校)
立ち上る線香の煙の構造変化
物理学・天文学
線香の煙は風があたらないとまっすぐと上昇します。しかし、風が吹いているときは、上昇するにつれて、煙の断面がドーナツ形、三日月形、C形、両端渦巻形へと構造を変えていきます。その原因は、線香本体にあたった風により発生した双子渦・後流が、線香の先端が燃えていることによる浮力で上昇していくためであることをつきとめました。この原因を突き止めるために、煙の周りの温度分布を測定したり、2本の線香に風があたったときの煙の構造変化を観察したり、線香の先端に異なる種類の羽根付き筒を取り付けて、立ち上る線香の煙の構造変化の違いを観察したりしました。
山田海斗、山中勇希、村上諒成
(名古屋大学教育学部附属高等学校(愛知県))
重力変化から地球半径を求める-ビルとトンネル内での重力測定-
物理学・天文学
地表から上に登るほど重力が減少することを利用して、電子天秤を使った重量測定から地球半径を求めることに挑戦しました。精密天秤を用いて230mまでの高層ビルで錘を測定し、0.4%の重力減少を確認できました。微小な重力変化を測定するため、天秤の除振や防風を徹底しました。さらに、測定ごとに分銅を垂直に持ち上げゼロ点を確認しました。その結果、公表値より45%大きい地球半径が得られました。その原因がビルの引力の効果と考え、ビル横の非常階段で測定したところ地球半径は公表値と0.7%以内で一致しました。次に地下21mの地下鉄駅と、80mの山を貫くトンネル内で測定し、深くなるほど重力が減少することを確認しました。理論値と測定値の差から、ビルと山の密度を見積もることができました。
寺島華苗、松鵜恭弘、大村匡人
(福岡県立明善高等学校)
使用済み携帯カイロの 新規機能性材料としての検討
材料科学
冬場に大量に廃棄される使用済みカイロのほとんどは家庭ゴミとして廃棄されています。有効な再利用法を検討するため、鉄の酸化反応について実験をしているとき、鉄が食塩水および過酸化水素の混合液と発熱しながら激しく反応し、さびることを発見しました。この現象の反応機構を解明するとともに、発生する熱の有効利用や生成する鉄化合物の有効利用を探求した結果、過マンガン酸カリウムによるエタノール酸化反応の触媒としての利用が示唆されました。さらに、使用済みカイロの内容物を添加した食塩水・過酸化水素混合液そのものにエタノール酸化反応を促進する働きがあることが確認されました。
小野寺遥、松本慶次郎、蜂巣令奈
(樹徳高等学校(群馬県))
こんにゃく飛粉をまぶした桑の葉による簡易的な高機能シルクの作出
材料科学
こんにゃく飛粉とは、蒟蒻を製造する際に生じる副産物のことです。昨年度までにこんにゃく飛粉を配合した人工飼料で高機能シルクを作出できることを確認しています。今年度は、こんにゃく飛粉をまぶした桑の葉を与える簡易的な方法を試してみました。この方法であれば、一般養蚕農家でも扱いやすく、将来的に群馬でブランド化できると考えました。また、こんにゃく飛粉が生糸の機能性(強度・繊度など)を向上させる理由として、シュウ酸カルシウムやアミノ酸・タンパク質が直接的に関与していないことがわかりました。また、セリシンの溶解性が低下したことでセリシンが溶けにくくなり、機能性が向上した可能性が示唆されました。
草加修宏
(津山工業高等専門学校(岡山県))
コラッツ問題を応用したウイルス感染のΛコラッツモデル
数学
コラッツ問題は数学が好きな人ならだれでも面白い問題です。しかしこれをウイルス感染のグラフとして考えた人は、今まで多分いなかったのではないかと自負しています。ウイルスは様々なものがあると思うので、それらの数学モデルが用意できたら素晴らしいなあと思って、この研究に取り組んでいます。また、自分でも驚いているのですが、この研究からコラッツ問題とは違う新しい問題をたくさん作ることができました。たとえばその一つの問題の名前を、私はルート2コラッツ問題と名付けました。