グランドアワード[文部科学省大臣賞/科学技術政策担当大臣賞/科学技術振興機構賞]
文部科学大臣賞 賞状、盾、研究奨励金
片岡柾人(島根県立出雲高等学校)
オカダンゴムシのフンに常在するブレビバクテリウム属菌による揮発性抗カビ効果
~ダンゴムシ研究11年目で掴んだ産業的・学術的可能性~
微生物学
小学1年からダンゴムシの研究を続ける中で、飼育ケースにカビが生えにくいと気づき、ダンゴムシのフンに抗カビ効果があることを明らかにしました。そして昨年、カビを抑制する能力を持った細菌「H4株」をオカダンゴムシのフンの中から見つけました。この研究で、H4株は遺伝子などの情報からBrevibacterium sediminisという放線菌の一種である可能性が高いとわかりました。この菌は、メタンチオール、チオ酢酸S-メチル、ジメチルジスルフィドと思われる揮発性の抗カビ物質を生産していました。また、出雲市内では、H4株は一年経ってもやはりダンゴムシのフンの中にいることがわかりました。また、島根県外のダンゴムシのフンにもH4株がいました。これによって、H4株とオカダンゴムシに共生関係がある可能性が示されました。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>科学技術政策担当大臣賞 賞状、盾、研究奨励金
橋本晃志(大阪府立大手前高等学校 定時制の課程)
クレーターの直径は重力に支配されるか?
~重力可変装置を用いた衝突クレーター重力スケーリング則の実験的検証~
物理学・天文学
クレーターのでき方はまだきちんと分かっていません。クレーターの直径と重力の間には、理論的には直径は重力の-1/4(-0.25)乗に比例しますが、NASAが行った実験によると、直径は重力の-0.16乗に比例しました。また、MGLABで行った実験では、直径は重力のゼロ乗に比例し、直径と重力は無関係でした。この2つの実験結果に白黒をつけようと実験をしました。我々科学部には、微小重力発生装置と重力可変装置があります。この装置を使って、いろいろな重力でクレーターを作ってその直径を測り、直径と重力の関係を求めました。結果は、驚くことに、理論の値と同じ-0.25になりました。なぜ科学部の結果が理論と同じになったのか、その原因を探っています。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>科学技術振興機構賞 賞状、盾、研究奨励金
長島大来(渋谷教育学園幕張高等学校)
歩行性甲虫(カブトムシ)の運動解析に基づく
6足歩行ロボットの製作と制御
ロボット工学・知能機械
生物模倣学とは、自然淘汰を通して発達した生物の仕組みを観察し、そこから着想を得て、新たな技術の開発や性能向上に結びつける事です。本研究では、重い体重で安定した歩行ができる特徴をもつ日本カブトムシの模倣ロボットの製作を通して、困難な場所で作業できるロボット製作に生かせる技術を見つけることを目的にしました。まず、カブトムシの生体分析を行い、カブトムシ独自の歩行パターンと腹部で自重を支える仕組みを見つけました。関節・足長・歩行パターン・腹の仕組みを模倣した完成ロボットを使った検証実験の結果、それらを模倣した「カブトムシ歩容」と「腹部ピース」の製作技術は、模倣ロボットにおいて、滑らかな歩き、背面の安定性、消費電力の減少と電流の安定につながると分かりました。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>特別協賛社賞[花王賞]
花王賞 賞状、研究奨励金
石川悠、横山佳観(福島県立福島高等学校)
プラズマによる気流制御技術を用いた
小型風力発電風車の製作
機械工学
プラズマを用いて気流を誘起するプラズマアクチュエータ(PA)を風力発電に応用して、発電効率の向上や安定的な電力供給などの課題解決をめざしています。風力発電風車の羽根周辺では、気流がその表面からはがれることで剥離領域が生じます。これは風車の回転を妨げる力の増加をもたらすため、気流の剥離を抑制することは風力発電の課題解決のために必要不可欠です。これまでの研究で、風車の羽根の迎角が静的・動的に変化するどちらの場合でも、PAは気流の剥離を抑制し、羽根に生じる揚力を増加させる性能をもつことがわかりました。今回の研究では,実際にPAを設置した小型風力発電風車を自作し、風車の発電電力を計測しました。PAを用いることで風車の回転数と出力電圧の増加が確認され、発電効率が改善させることができました。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>協賛社賞[JFEスチール賞/栗田工業賞]
JFEスチール賞 賞状、研究奨励金
小川福史、三室裕暉、相原聖玲星(静岡理工科大学静岡北高等学校)
省エネルギー水電解と鉄炭素電池を組み合わせた
富栄養化防止システムの開発
環境工学
世界の多くの湖沼で富栄養化が深刻です。原因となる物質は、窒素やリンなどの栄養塩で、工場や家庭廃水、農業など、あらゆる人間生活の局面で排出されています。特に、途上国では富栄養化による生態系の破壊や人間の生活や健康への影響が深刻で、安全な水の確保が困難になる場合もあります。一方、リンは枯渇が懸念される資源なので、回収し、再利用すべきですが、その方法は確立していません。そこで、本研究は、省エネ水電解と環境に優しい鉄炭素電池を組み合わせた除去装置を開発し、硝酸イオンとリン酸の持続的な除去およびリンの回収を可能にしました。さらに、この装置の構造は単純なので、河川や湖沼などで活用でき、従来の浄化設備等へ組み込むこともできます。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>栗田工業賞 賞、研究奨励金
前田彩花(ノートルダム清心学園清心女子高等学校(岡山県))
イネの吸水機構
~植物が最も吸水できる時間とは~
植物科学
イネの吸水量の変化について調べたところ、吸水は日の出直前から日没直後に向けて高まっていることが分かりました。さらに気孔の開閉について調べたところ、気孔は日の出後から開き始め、日没後に閉じ始めていることがわかりました。次にアクアポリンという根に存在する水の通り道に焦点をあて、その発現リズムを調べたところ、吸水量の増減とほぼ一致しました。このことよりイネの吸水はアクアポリンの発現→吸水量の増加→日の出→気孔の開閉→光合成によりさらに吸水が促進される、という流れになるということが考えられました。給水量と生育の関係については現在調査中です。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>主催者賞[朝日新聞社賞]
朝日新聞社賞 賞状、研究奨励金
濱崎莉未、森凪沙、水口喬太(長崎県立諫早農業高等学校)
温州みかん廃棄物の有効利用法
環境工学
長崎県は温州みかんの特産地で、果汁工場などで大量の廃棄物(果皮やじょうのう部位)が生じます。その廃棄物を利用して椎茸栽培に成功しました。さらに、その技術は通常の栽培より1.5倍椎茸菌の生育スピードが早いことが判明したので、特許を出願しました。また、みかん果汁にも付加価値をつけるため、地元諫早市の伝統菓子「諫早おこし」とコラボさせ、「みかんおこし」を商品化しました。現在、空港や郵便局、スーパーなどに販路が拡大され、1万箱を売り上げるほどの人気商品となっています。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>協力社賞[荏原製作所賞/竹中工務店賞/阪急交通社賞]
荏原製作所賞 賞状、研究奨励金
和田匠平(神戸学院大学附属高等学校(兵庫県))
砂浜のきのこ「スナジホウライタケ」の
病理学、分類学、生態学的再検討
植物科学
砂浜のイネ科植物などから発生しているスナジホウライタケというきのこの生態や分類、病原性などの総合的な研究です。5年をかけて日本中の砂浜を観察し、感じた様々な疑問を解決するため、きのこや草の組織の顕微鏡観察、菌糸の培養、DNAの解析、砂の粒度分析などを行いました。過酷な砂浜に発生するスナジホウライタケは、砂粒の小さな砂浜を好んで生息し、外的刺激から身をまもるために鎧状に砂をまとい、植物の安定した地下茎の道管内で越冬し、株間を移動するなど様々な工夫をして全国の砂浜に繁栄しているとわかりました。過酷な環境のきのこは成長につれ、表面の形を変え行くことを確認したので、表皮組織の形態による分類が適切でないという分類原則も提案しました。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>竹中工務店賞 賞状、研究奨励金
有福遼太郎、富重亮佑(山口県立徳山高等学校)
2つのAIを用いた打音による検査システムの開発
ロボット工学・知能機械
建物や橋や道路、水道管などは私たちの生活には欠かせませんが、これらは必ず劣化していきます。壊れる前に検査して直す必要がありますが、今、この検査ができる技術者が不足しています。そこで、誰でも手軽かつ安価に検査できるツールを人工知能を使って開発しました。ハンマーで物体をたたくと音が出ますが、この音を人工知能が判定してスマホのグラフに表示します。例えば、鉄筋がはいっていないスカスカのコンクリートをたたくと「空っぽで金属なし」エリアに点が打たれます。逆に高密度の鉄筋コンクリートでは「密で金属あり」エリアになります。将来はボルトのゆるみやスイカの中身など、多様な用途に対応したいと考えています。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>阪急交通社賞 賞状、研究奨励金
安済翔真、二宮康太郎(滋賀県立彦根東高等学校)
拡張されたSoddyの六球連鎖における
半径の逆数和の性質
数学
2017年にSoddyの六球連鎖の拡張に関する研究を始めました。Soddyの六球連鎖を生成する操作を繰り返し行うことで拡張した「第n世代のhexlet」という集合を定義し、その性質を明らかにする研究です。先輩たちは、この集合に属する球の個数が6^nであることを証明しました。私たちは、この集合に属する球の半径の逆数和が、核球の半径の逆数和の一次関数で表されることを証明しました。そして、その一次関数の係数は、ある3次方程式の解を用いて表わすことができることも分かりました。これらの研究は、Soddyの六球連鎖で成り立つ性質が、この「第n世代のhexlet」という集合にきれいに拡張されることを示したものです。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>特別奨励賞[テレビ朝日特別奨励賞/花王特別奨励賞]
テレビ朝日特別奨励賞 賞状、副賞
望月草馬(奈良女子大学附属中等教育学校)
超音波を用いた非接触型触覚提示装置
組み込みシステム
音は物体を振動させるだけでなく、圧力を発生し、単純に物体を押すという作用も持ち合わせています。私は空気中の任意の位置に音を集束させることで、狙った場所に圧力を発生させる装置を開発しました。集束させるための方法として、72ch全てのスピーカーの音を出すタイミングを意図的にずらし、音が空気中に集まるようにしています。また、たくさんのスピーカーの音を出すタイミングを制御するために、発振器や制御するシステムを自作しました。今回開発した装置を人の動きを感知するセンサーやホログラムなどと組み合わせることで、利用者に触覚を提示することができます。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>花王特別奨励賞 賞状、副賞
窪田瑛仁、吉野泰生、四海成々実(熊本県立宇土高等学校)
屈折率の研究3
Zゾーンの全容解明と屈折率アプリによる糖度の可視化
物理学・天文学
私たちが発見したZゾーンは、透明な半球の容器の周りに出現する白い縁を指します。この長さを測るだけで、2つの物体間を光が屈折する時に、光をどれくらい曲げるのかを表す「屈折率」を簡単に測ることができます。今回の私たちの研究は、このZゾーンが出現する原理の解明と、屈折率を誰でも簡単に測定できるアプリケーションの開発をしました。その結果、Zゾーンは様々な方向から半球に入射した光が、層状に重なり合って形成されていることがわかりました。さらにこのアプリで、水溶液の濃度さえも簡単に測れます。このアプリで、私たちの生活の中での健康管理など、様々な分野で役立てられると考えています。
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松本生成、久野伊織、田中宏紀(鳥取県立鳥取西高等学校)
スナヤツメ(Lethenteron.sp)の
アンモシーテス幼生に見られるLipSway行動
動物科学
スナヤツメは一見細長くて地味な細い魚ですが、4億年以上前に地球上に誕生した、最も原始的な脊椎動物の仲間で、進化の謎を解く鍵となる「進化の宝箱」のような生物だと言われます。そのスナヤツメが泥に潜るときの頭部の動きを、泥を透明化して観察し、唇を左右に振る動き(Lip sway)を世界で初めて発見しました。この動きを上下左右から撮影し、詳細な唇の動きを解明しました。また、コンピュータソフトでそのスピードや個体による違いなどを解析しました。またアメリカやカナダでも現地調査をしてスナヤツメ以外の種でもLip swayをすることを確認し、ヤツメウナギ類に広くみられる行動であることを示しました。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>審査委員奨励賞
審査委員奨励賞 賞状、研究奨励金
高津舞衣(兵庫県立宝塚北高等学校)
カラメル化に必要な構造を同定する
化学
プリンの上にかかっているカラメルが今回の研究対象です。カラメルは糖だけで加熱したときに起こるカラメル化反応を利用して作られています。とても身近な反応ですが、その反応経路はよくわかっていません。そこで、今回はブドウ糖と果糖とそれらと少しだけ構造(分子の形や原子同士のつながり方)が違う糖をホットプレートやオーブンレンジを用いて実際に加熱して、色の変化とその途中できる物質やその量を比較することでカラメル化にはどのような構造が関わっているのかを調べました。その結果、カラメル化によって共通してできる物質と、褐色になるために必要な構造を特定しました。
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田中拓海(岐阜県立可児高等学校)
ワニ類2型における四肢骨からの全長推定
~化石種の全長推定をめざして~
地球・環境科学
日本でもワニの化石は産出します。しかし、多くの断片的な骨で、一個体全体の骨が見つかることはめったにありません。この研究では、現生のワニの骨格標本から全長と四肢骨54カ所の相関性を調べ、数式化(グラフ化)することで、断片的な化石の骨の情報から全長を推定できるようにしました。骨の断片から一個体をイメージしたり、集団のサイズ構成を推定したりすることで、化石から古環境のより多くの情報を得られると考えています。
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野崎舞(文京学院大学女子高等学校)
ピザの定理の正N角形への拡張
―内部2N角形と外部の対称性を用いた証明ー
数学
ピザの定理とは、円盤をとある方法で切り分けることで2つの部分の面積合計を等分とすることができる、初等幾何の定理です。私は今研究にてピザの定理を円盤から正N角形へと拡張可能か否かを調べてきました。結果は、Nが偶数の場合において拡張可能です。簡易的な証明法としては、正N角形の内部に2N角形を作成、その後に「2N角形の内部」および「正N角形と2N角形間の面積」のピザの定理における合同定義の証明を行いました。これらの方法は具体例を用いた実験的証明により発案された方法であり、全ての動作が視覚的に一般化されます。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>過去の表彰研究作品
- ・JSEC2018 表彰研究作品 優秀賞 / ISEF2019
- これまで(~JSEC2017)の大会記録