優秀賞

優秀賞 榊原 聖瑛、山田 遼祐、山口 誠太(サレジオ学院高等学校)

榊原 聖瑛、山田 遼祐、山口 誠太
(サレジオ学院高等学校)
キンチャクガニ Lybia tessellata に保持されるイソギンチャクの形態変化

動物科学

キンチャクガニ (Lybia tessellata) は、太平洋などの浅く暖かい海に棲息する、甲長約1~2cmのオウギガニ科キンチャクガニ属のカニです。本種の特徴は両鋏脚に白い小さなイソギンチャクを保持することで、外敵が来るとそのイソギンチャクを振り威嚇します。彼らの生態が多くの謎に包まれていると知った私達は、彼らに強い魅力を感じ、謎の解明のため研究を始めました。
詳しい研究内容としては、保持するイソギンチャクの種類の選択や、イソギンチャクを持つ理由、イソギンチャクの白化の原因などの解明、及び生態の観察が主なものです。

優秀賞 河野 洋、渡邊 あかり(安田学園高等学校)

河野 洋、渡邊 あかり
(安田学園高等学校)
クロマルハナバチ(Bombus ignitus)の社会性免疫
-死体排除行動のリリーサーの探索-

動物科学

クロマルハナバチを観察すると、巣のなかの死体を外に出す「死体排除行動」が見られ、「接触」「噛み付く」「引きずる」の順で段階的に引き起こされていることがわかりました。また、死んだ直後と、死後24時間後の死体に対する行動の違いを比べると、後者の方が噛み付かれやすかったことから、この行動は死後時間の経過に伴って引き起こされやすくなることがわかりました。
次に、死体がどのように認知されているのかを明らかにするために、体表物質を洗い流すことができるジクロロメタンで洗った死体と、水で洗った死体を巣内に入れて反応の違いを観察しました。その結果、体表物質の減少によって、認知されることがわかりました。

優秀賞 渡邉 友哉(東京都立豊島高等学校)

渡邉 友哉
(東京都立豊島高等学校)
幻の変化アサガオ間黄の秘密を探る

植物科学

変化アサガオは、江戸時代に多くの愛好家によって栽培された遺伝子の変異により、花や葉の色や形が異なるアサガオのことです。しかし、第二次世界大戦中に、多くの変化アサガオの種類が失われました。今回、この失われた幻の変化アサガオの一つである「間黄」を研究しました。間黄は、黄葉よりも、葉が黄色い葉をもつアサガオで、なぜ葉が黄色になるかを調べました。緑葉、黄緑色の黄葉、間黄の3種類のアサガオを比較しました。結果、間黄は、光合成色素の量を調整する遺伝子が壊れており、他と比べて光合成色素の量が少なくなっていました。また、葉の構造を調べると葉の表面の細胞が不均一で光を反射しやすいため、より黄色く見えていたことがわかりました。

優秀賞 臼井 健、佐藤 曜、岡崎 亜美(茗溪学園高等学校)

臼井 健、佐藤 曜、岡崎 亜美
(茗溪学園高等学校)
ナガミヒナゲシのアレロケミカルを追う

植物科学

アレロパシー作用とは、植物が合成する化学物質によって近隣植物の生理現象に影響を与える現象です。外来植物のナガミヒナゲシは、強いアレロパシー作用を持つといわれていますが、その原因物質であるアレロケミカルの性質は明らかにされていません。このアレロケミカルの単離と特定を目指して研究を進めています。研究の結果、それは、高濃度で発芽抑制作用があり、地下部への強い成長抑制と地上部への成長促進作用がありました。このため植物体のバランスを大きく崩します。さらに、単子葉植物よりも双子葉植物に対して影響力があります。アレロケミカルはエタノールには溶けない水溶性の高極性物質で、熱に対して安定であることが分かりました。

優秀賞 川村 ヒカル(仁川学院高等学校)

川村 ヒカル
(仁川学院高等学校)
自作金コロイドの性質と利用

化学

水の中で金原子が集まり、直径10nmになると赤色に見えます。この金粒子が水の中に分散したものを金コロイドといいます。金コロイドは作り方によって性質が変わります。私が作った金コロイドは、化学的に安定で電解質溶液に対しても変化しにくいものです。この研究では金コロイドがどれくらい安定か調べるところから始め、利用法を探りました。その結果、染色方法を工夫することで、絹や木綿の布を紫色に染めることができました。和紙を金コロイドで染めたものはプリンターにかけて印刷できました。PVAフィルムや尿素樹脂に金コロイドを含ませることもできました。ホウセンカの道管も染めることができました。

優秀賞 横山 愛子、森山 和(富山県立富山中部高等学校)

横山 愛子、森山 和
(富山県立富山中部高等学校)
CMC-Na溶液中での光による銀コロイドの生成

化学

私たちは、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)という、食品添加物などに利用される身近な物質を水に溶かし、硝酸銀水溶液を加えて光を照射すると、赤褐色の銀コロイド溶液ができることに気づきました。臭化銀などの銀イオンのハロゲン化合物は、光を当てると単体の銀になるという性質があり、写真の現像に用いられています。また、銀の微粒子が集まってナノサイズになると、赤褐色の溶液(ナノコロイド溶液)になることが知られています。私たちの実験から、CMC-Na溶液に微量の銀イオンを加えて、青色の波長の光を短時間照射することで安定した銀コロイド溶液が生成することが分かりました。

優秀賞 櫻井 壮二郎、廣川 真路、渡辺 菜月(北海道旭川東高等学校)

櫻井 壮二郎、廣川 真路、渡辺 菜月
(北海道旭川東高等学校)
亜鉛板は腐食するとなぜ黒くなるのか

化学

ダニエル電池に使用した亜鉛板が黒くなるのは、硫酸銅水溶液中の銅イオンが透析膜を通過し析出するためです。そのため硫酸銅水溶液の体積を変化させると亜鉛板の黒くなる速さが変わります。一方、塩酸で腐食させた亜鉛板が黒くなるのは、銅が含まれているからです。銅と亜鉛が局部電池を形成することで反応が激しくなり、表面の凹凸が大きくなります。その結果、光を吸収し黒く見えます。純度が低い亜鉛板は塩酸で腐食させると黒くなりますが、純度が高い亜鉛板は黒くなりません。実際に、高純度の亜鉛板に銅を添加して合金を作ると塩酸で黒く変色するようになります。また、表面積を測定すると、黒くなった亜鉛板は黒くならなかった亜鉛板の5~8倍大きくなっていました。

優秀賞 藤島 直太、石井 靖丈、柴田 理央(秋田県立秋田高等学校)

藤島 直太、石井 靖丈、柴田 理央
(秋田県立秋田高等学校)
マイタケの判別法の開発
~秋田県産マイタケの産地偽装問題の解決を目指して~

細胞・分子生物学

従来のマイタケの判別法は必要な費用や労力が多いものでした。なぜならDNAの塩基配列の一部をシーケンサーという機械で読み取る必要があったからです。そこで我々はより安価で簡便に行えるマイタケの判別法を確立するために、DNA鑑定の手法であるRAPD法と形態観察の2つを検証しました。DNA鑑定は正確な一方でクローンのブランドが判別できないので、クローンどうしの判別を形態観察で補うためです。私たちはRAPD法について様々な実験条件を検証し、クローン以外を判別可能な条件を突き止めました。また、クローンのブランドは、今回の判別対象としたものに関しては主に傘の色の違いから判別することができました。

優秀賞 安井 莉彩、永塘 香帆、林 風里(宮城学院中学校高等学校)

安井 莉彩、永塘 香帆、林 風里
(宮城学院中学校高等学校)
食用廃油の資源化~タンパク質危機の解決に向けて~

微生物学

パンやお酒をつくるのに用いられるコウボは、単細胞の微生物であり、市販されているドライイーストがコウボです。乾燥するとタンパク質を多く含む粉状になります。加工食品の成分表示を見てみると、食品に酵母エキスやコウボそのものが加工時に使われています。これを用いることで、栄養価の高い食品になります。コウボを培養するには、糖が必要で人が直接食べることができる食糧と競合します。そこで、フライや天ぷらに用いられた後の食用廃油を食べることができるコウボを探してきて、コウボタンパク質をつくり、タンパク質危機の解決策を目指しています。これは、食用廃油による水質汚染などの環境問題と食料問題の同時解決ができるものです。

優秀賞 田中 陽登、馬場 光希、浜島 悠哉(東京都立立川高等学校)

田中 陽登、馬場 光希、浜島 悠哉
(東京都立立川高等学校)
視程の新たな観測方法の開発とその分析
~観測装置を自作し、50年間続いた視程観測を再開してその傾向を探る~

地球・環境科学

視程とは、何km先まで見通せるかを表す気象用語です。本校天文気象部は戦後すぐから20年前まで視程観測を続け、2年前に先輩が膨大な過去データの整理と分析を始め、過去の悪視程と大気汚染との関連を明らかにしました。同時に観測を再開しましたが、目視で毎日定時に観測するのは大変でした。そこで、新たな視程の観測方法として、小型コンピュータで一眼レフカメラを制御して定時撮影を行う装置を開発し、視程の傾向と気象現象や大気汚染との関連について考えました。その結果、現在の視程は過去(1950~70年代)に比べて圧倒的に良いこと、天候や湿度、エアロゾルなどに関連していることがわかりました。

優秀賞 木村 香佑(島根県立浜田高等学校)

木村 香佑
(島根県立浜田高等学校)
起電力が1.2Vを超える超分子色素増感型太陽電池の作成

エネルギー:持続可能な材料・設計

この色素増感型太陽電池は銀導電性フィルム、ローダミンB電解液、超分子色素といういままでに誰も使ったことのない素材の組み合わせで作られています。今まで使われていたヨウ素電解液での理論的最大起電力はでは最大で0.9Vですが、ローダミンB電解液は最大で1. 84Vです。ローダミンB電解液を使っている太陽電池は本校のみですので、起電力だけでいうと1.2Vを超えている本校の色素増感型太陽電池が世界最高値になります。ローダミンBは明太子の着色に使われている食紅なので安全です。超分子は2つの色素が結合してできています。その結合は鉛筆芯の黒鉛の炭素原子の結合と同じです。

優秀賞 塚口 湧太(米子工業高等専門学校)

塚口 湧太
(米子工業高等専門学校)
卵殻を用いて簡便に作製できるPM2.5吸着材料の新規開発

環境工学

空気中の有害物質「PM2.5」を吸着する材料として、卵の殻を利用する研究です。これまでの研究で、卵殻が線香の煙やホルムアルデヒドを吸着することを発見し、PM2.5も吸えるのではないかと考えました。卵殻をそのまま使うと破片が飛散するため、石膏で固めて使いました。水槽の中に石膏を混ぜた卵殻を入れ、その中にPM2.5を含む空気を入れて蓋をし、測定しました。その結果、PM2. 5を吸着していることが分かりました。卵殻には凹凸や穴があることや、主成分である炭酸カルシウムがPM2.5と相性がよいことが要因だと考えています。空気の流れを考慮した装置の設計なども行い、実用化したいです。

優秀賞 桐生 有喜(静岡サレジオ高等学校)

桐生 有喜
(静岡サレジオ高等学校)
2^m -1が任意の奇数の倍数となる最小の自然数mの探究
~メルセンヌ素数とのつながり~

数学

3以上の素数Xを何でも考えてみたとき、1×2を素数Xで割った余りは2になります。1×2×2を素数Xで割った余りは1か4になります。素数Xで割った余りを初めて1にするために2を1にかける回数は、異なる素数Xで実験してみればわかりますが、選ぶ素数Xによって大きく異なります。その回数は選んだ素数Xから1を引いた数の約数であることは有名な事実として数学界では知られています。しかし、具体的にどのような条件を満たす約数がその事実を満たすのかは知られていません。僕の研究ではそのほとんど何も解明されていない約数の条件を発見することを目的としています。本研究はRSA暗号の強化に役立つと考えています。

優秀賞 草加 修宏(津山工業高等専門学校)

草加 修宏
(津山工業高等専門学校)
セルオートマトンを用いたコラッツ拡散数理モデル

数学

コラッツ予想を用いて拡散数理モデルについて研究しました。まず,コラッツ予想とは、ある数が奇数のときは、3倍して1を足して、偶数なら2で割る。この操作を繰り返せば、どんな自然数でも最終的に1に変換されるという予想です。このコラッツ予想が描くグラフが、ある種のエネルギー状態を示しているのではないかと考えました。このある種のエネルギーの状態値をコラッツエネルギーと考えました。空間上に、コラッツエネルギーを持つ点を考えて、この点からは周りに確率的にコラッツエネルギーを伝播する力を持っていると考えました。これらの考えをもとに、コラッツ拡散数理モデルを考えて、プログラムしました。

優秀賞 中川 倫太郎(愛知県立旭丘高等学校)

中川 倫太郎
(愛知県立旭丘高等学校)
斜線付き格子と角のパーフェクトマッチング

数学

 数論の未解決問題に「マルコフ予想」と呼ばれるものがあります。この問題はなんと、100年以上も解かれていないのです!しかし近年、「斜線付き格子」と「角のパーフェクトマッチング」という概念を用いることで、数論に関するこの問題を組合せ論の問題に還元して解決しようという試みがなされています。私は今回、「斜線付き格子」と「角のパーフェクトマッチング」について研究をし、斜線付き格子の表記の一般化や、ある条件を満たす斜線付き格子の個数、角のパーフェクトマッチングの個数とフィボナッチ数の関係、さらにはこれら二つの概念に隠されている代数的構造を発見することができました。

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