グランドアワード[文部科学大臣賞/科学技術政策担当大臣賞/科学技術振興機構賞]
文部科学大臣賞 賞状、盾、研究奨励金
間石 啓太、藤谷 まい、奧野 優一郎(大阪府立春日丘高等学校定時制の課程、大阪府立大手前高等学校定時制の課程、大阪府立今宮工科高等学校定時制の課程)
微小重力を用いた永久磁石による固体粒子の分離と非破壊同定
~「固体版クロマトグラフィー」をめざして~
化学
中学生の頃にやったかもしれませんが、実は「磁石が鉄にくっつく」のではなく「磁石が鉄を引っ張っている」のです。そう考えると逆に「磁石から離れる物」はないのかな?と思いませんか。
実は身近にある「水」や「鉛筆の芯(グラファイト)」は磁石から離れるのです。さらに、この離れる距離は種類によって遠くまで離れる物や、ちょっとしか離れない物もあります。この距離の差を使って、岩の中から高価なダイヤモンドだけを簡単に取ることができる装置を作りました。
科学技術政策担当大臣賞 賞状、盾、研究奨励金
中山 和奏(神戸大学附属中等教育学校)
チョウの翅の撥水性と微細構造の関係
-水接触角・滑落角の観点から―
動物科学
チョウは雨の日でも翅に水がしみ込むことなく飛べていますが、実際どのくらい撥水しているのか、なぜ撥水するのかについて、水接触角、滑落角といった二つの観点で評価しました。
水接触角の観点からは、チョウの鱗粉表面には細かい網目構造があり、これによって中に水滴が入っていけず、ハスの葉と同程度撥水していると考えられます。
また滑落角の観点からは、鱗粉が生えている方向である、胴から外側方向によく撥水し、逆方向には撥水しにくいということが分かりました。チョウは雨の日に翅を畳み葉の下などにぶら下がるため、胴から外側方向に撥水しやすいというこの特徴は、チョウにとって雨の日に有利なものであると考えられます。
科学技術振興機構賞 賞状、盾、研究奨励金
左藤 開己(奈良女子大学附属中等教育学校)
ビュフォンの針の高次元への拡張
~図形を用いた確率の計算理論と幾何への応用~
数学
ビュフォンの針とは、等間隔で並んだ平行線に対して一定の長さの針を投げたときに、その針が平行線と交わる確率はどうなるのかという問題のことです。私は、針を凸形の平面図形に置き換えたときの確率が、その図形の周の長さに比例する簡単な式で与えられることを発見し、証明しました。さらに3次元に拡張させても同様の結果を得ることができました。得られた結果は、幾何学や工学でも応用が期待できると考えられます。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>特別協賛社賞[花王賞]
花王賞 賞状、研究奨励金
谷本 里音、田中 響、望月 凌(静岡理工科大学静岡北高等学校)
茶粕と鉄イオンを用いた光化学的水素製造法
エネルギー:持続可能な材料・設計
水素はクリーンなエネルギー源ですが、その大部分は化石資源から製造されているため、地球温暖化の原因となる二酸化炭素が大量に排出されます。水の電気分解やバイオマス等の発酵を用いた場合は、二酸化炭素の発生は避けられますが、製造コストが高いという問題があります。
そこで、太陽光を利用し、茶粕と鉄イオンと水とを用いて水素を生成する方法を開発すると共に、生成を促進させる条件を発見しました。さらに、鉄炭素電池を活用し、二酸化炭素を捕まえ、鉄イオンを持続的に供給できる水素製造装置を開発しました。その結果、より長期間の安定的な水素生成と電力の回収に成功し、化石資源から製造される水素と同じくらいの製造単価を実現できました。
協賛社賞[JFEスチール賞/栗田工業賞/日本ガイシ賞]
JFEスチール賞 賞状、研究奨励金
榎本 千夏、時本 悠生(津山工業高等専門学校(岡山県))
透過光の干渉を利用した逆シャボン玉の膜厚測定
物理学・天文学
少量の洗剤を混ぜた水をスポイトやストローですくって水面に落下させると、水中に逆シャボン玉ができることがあります。逆シャボン玉が割れたとき、水中に小さな泡が残るので、逆シャボン玉は薄い空気の膜で覆われた水滴であることが分かります。通常のシャボン玉の水と空気が入れ替わった構造なので、逆シャボン玉とよばれます。空気膜がとても薄いので、光の干渉から縞模様ができます。それを利用して膜の厚みを測れることを明らかにしました。また、水中を浮き上がるときの速度から膜厚を測定することも試みました。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>栗田工業賞 賞、研究奨励金
武藤 優里、神崎 七海、樋田 一貴(愛知県立一宮高等学校)
イオン液体によるセルロースの酸加水分解の効率化
~バイオエタノール生成の効率化に向けて~
化学
化石燃料に代わるエネルギー資源として、バイオエタノールの生産が伸びています。バイオエタノールは主にグルコースという物質から作られます。しかし、現在このグルコースは主にトウモロコシやサトウキビなどから取り出されており、食糧との競合が課題です。グルコースの生成には植物に豊富に含まれるセルロースという物質を分解するという方法もありますが、分解が難しくコストがかかるため、実用化には至っていません。
私たちはこの分解の過程でイオン液体を用いることで問題を解決し、新たなバイオエタノール製造法を提案しました。
日本ガイシ賞 賞、研究奨励金
川野 舞奈、永田 芙佳(広島大学附属高等学校)
スープを飲むとき急に冷たく感じるのは本当か?
―温度変化の少ないコップの開発―
物理学・天文学
コップ内の液体を飲むとき、温度が急に下がったり逆に上昇したりすることがあります。原因を調べると、液体の粘性が大きいほど顕著であることがわかりました。またある粘性の液体をコップから流し出す実験から、コップ内の場所によって特徴的な流れ出し方があることが明らかになりました。
この結果を参考に、流れ出す温度変化ができるだけ少ないコップの形状を考案し、温度変化を調べた結果、期待される効果を得ました。今回新たに考案したコップを使うと、嚥下機能の低い人がとろみ剤を摂取する際に温度が上下する危険性をなくすことができ、より安全でおいしくスープなどを飲むことができると期待できます。
主催者賞[朝日新聞社賞]
朝日新聞社賞 賞状、研究奨励金
大屋 孝輔、小松 俊文、得丸 恭隆(渋谷教育学園幕張高等学校(千葉県))
自作スーパーコンピューターによる銀河衝突シミュレーション
物理学・天文学
学校のPC室の定期的な入れ替えの際、役目を終えたPCは廃棄されていました。そこで、貴重なCPU資源を再利用すべく、廃棄されるPCを用いて安価かつ高速なスーパーコンピューターを製作し、銀河衝突シミュレーションの実行を通して実用化を試みました。
まず無償で、並列計算が可能な環境を整えました。次にこのスーパーコンピューターを実用化するため、N体シミュレーションコードである「GADGET2」を利用した銀河衝突シミュレーションを実行しました。
演算結果と実際の銀河とを比較し、輝度分布が非常に似ていることがわかりました。観測とシミュレーション結果が類似していたことから、シミュレーションを通して、実在する銀河衝突を考察できることがわかりました。一般的な家庭用PCと比べて、非常に速い速度で演算することができたので、この他にも様々な研究に使うことができます。
協力社賞[荏原製作所賞/竹中工務店賞/阪急交通社賞]
荏原製作所賞 賞状、研究奨励金
遊橋 望海(浜松市立高等学校)
機械学習を用いた体格・骨格ベースの動物走行速度予測モデル
~ キリンがチーターより速くないのはなぜ? ~
動物科学
すらりと脚の長いキリンが、チーターより遅いのは、なぜなのでしょうか?四足歩行の動物は走る姿が似ているので、同じような体の使い方をしています。そのため、走行速度の違いは、身体の構造的な特徴によると考えました。
そこで、コンピュータに体格・骨格のデータを学習させて、走行速度を予測するモデルを作りました。3種類の学習方法を試し、その一つであるランダムフォレストで正答率91.6%の予測精度が出せました。身体の構造的特徴で分岐する木構造の予測モデルから、キリンは、体長の割に後脚が短く、体重が大きいことが、走行速度にマイナスに働くため、チーターより足が遅いことが判明しました。走行速度の予測モデルを応用すれば、まだあまり調べられていない動物の生態(例えば捕食/被捕食関係など)も予想できます。
竹中工務店賞 賞状、研究奨励金
浅倉 ゆい(玉川学園高等部(東京都))
レール上を転がる球の摩擦力の研究
物理学・天文学
球が転がるときの転がり摩擦力について研究しています。そもそも摩擦は速度に依存しないとありますが、実際に計測した私の研究では速度に依存する傾向がありました。その要因としてレールの特徴的な形状や平坦性などが挙げられ、何度も実験を改善し検証するうちに、球の大きさによって摩擦係数の速度依存性が違うという結果が得られました。
この結果に対してレールの間隔や球を替えて実験し、球が鍵を握っていることを突き止め、顕微鏡で球の表面を見たり、反射望遠鏡の凹面鏡上を転がしたりして球の状態を調べました。以上から、転がり摩擦係数の速度依存性の傾向を利用して、球自体の真球度を計測する方法を導きました。
阪急交通社賞 賞状、研究奨励金
谷川 茉緒、大久保 茉亜子(兵庫県立宝塚北高等学校)
クエン酸及びマグネシウムイオンにより
システインプロテアーゼは阻害される
生化学
生のパイナップルを用いたゼリーは固まらないことが知られています。これはパイナップルに含まれるタンパク質分解酵素(システインプロテアーゼ)がゼラチンを分解するためです。しかし2019年に先輩が、パインゼリーにクエン酸とMg2+を加えるとゼリーが固まることを明らかにしました。そこで私たちは、この反応が、クエン酸と陽イオンが作用してシステインプロテアーゼのはたらきを抑制(阻害)するために起こることを明らかにしました。すでに知られているシステインプロテアーゼ阻害剤は高価であったり、毒性が高かったりしますが、このクエン酸とMg2+の阻害は安価で安全にシステインプロテアーゼのはたらきをコントロールできる可能性があります。
アブストラクト(研究の要約)はこちら[PDFファイルが開きます]>特別奨励賞[テレビ朝日特別奨励賞/花王特別奨励賞]
テレビ朝日特別奨励賞 賞状、副賞
川口 拓真(安田学園高等学校(東京都))
ミツバチの記憶・学習能力は
個体間のコミュニケーションによって発達する
動物科学
ミツバチは優れた学習能力を持っていますが、その具体的な発達要因は分かっていませんでした。学習能力がコミュニケーションによって発達するのではないかと考え、ガラス容器の中で単独飼育した働き蜂、容器の中に巣片を入れて飼育した働き蜂、容器の中に2匹入れてペア飼育した働き蜂の間で学習率を比較しました。
さらに、ペア飼育環境下の行動観察も行いました。その結果、ペア飼育した働き蜂の学習率が上昇し、ミツバチの学習能力が個体間のコミュニケーションによって発達することが分かりました。また、老齢蜂とペア飼育した若齢蜂の学習率や行動、生存率を調べた結果、個体の経験値が他個体に伝承されている可能性も示唆されました。
花王特別奨励賞 賞状、副賞
石原 亜侑美、前田 彩花(ノートルダム清心学園清心女子高等学校(岡山県))
植物の吸水リズムを生み出す原因とは
植物科学
アジアイネ及びオオムギを研究対象とし、温度一定環境下における吸水の日周変動を引き起こす原因について、吸水機構に関わる蒸散・アクアポリン発現量・根の水透過性を調べ、それらと吸水の日周変動を比較して、イネとオオムギの吸水機構を考察しました。
2020年に新しく進めているオオムギについては、光に対する感受性が高いことに加え、蒸散量の変動とアクアポリン遺伝子の日周変動の位相に共通部分が多く、これらが同様のタイミングで吸水量の変動に関わっている事が考えられました。 また、アジアイネとオオムギを比較すると、光に対する反応や吸水量の日周変動などの面で違いが見られましたが、両方とも吸水には蒸散やアクアポリンが関わっていることがわかりました。
花王特別奨励賞 賞状、副賞
南 慧(甲南高等学校(兵庫県))
自然言語処理と機械学習を用いた
タンパク質の高発現塩基配列の創製
計算生物学・バイオインフォマティクス
関西弁では、「ちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうんちゃう」という文章があります。これを「ちゃうちゃう チャウチャウ ちゃうんちゃう?」と書くと、多くの人が「いやいや、チャウチャウ犬ではないでしょ?」と意味がわかります。
コンピュータでは、文字列をこのように、分かち書きしてその文章を分類したり重要な単語を類推したりできます。これを自然言語処理と機械学習と言います。
私は、これをタンパク質の合成量をコントロールしている遺伝子の非翻訳領域という部分に適用してみました。すると、非翻訳領域中でタンパク質の合成量を大きくできる(かもしれない)遺伝子を同定することができました。
審査委員奨励賞
審査委員奨励賞 賞状、研究奨励金
木村 元弥、池田 誠秀、谷口 さくら(池田学園池田高等学校(鹿児島県))
マイクロプラスチック等の海洋環境リモートセンシングにおけるロボティクスの活用
ロボット工学・知能機械
マイクロプラスチックの海底分布の実態を調査するためのROV(水中ドローン)を作るプロジェクトです。最近、海底にもマイクロプラスチックが分布していることが分かり始めましたが、あまり詳しい分布や実態が分かっていないのが現状だそうです。そこで、海底のサンプルを採取できるようになれば、実態が分かるようになるのではないかと考え、廉価なオープンソースROVの開発を行うことにしました。
設計し、3Dプリンター等を使ってパーツを製作し、組み立て、ROVを完成させ、海で45mまで潜航させ、海底に着底することに成功しました。
また、今回開発したROVは、海洋生物、海底資源、海底の沈船、遺跡等様々な海中での研究にも応用できるようになっています。
審査委員奨励賞 賞状、研究奨励金
吽野 菜々美(千葉市立千葉高等学校)
転んだダンゴムシ、どのように起き上がる?
動物科学
ダンゴムシは裏返しになった状態から元に戻ろうとするとき、触角や脚を動かして体を起き上がらせます。そこで、起き上がる時に触角や脚を動かすルールはあるのか調べました。「起き上がるルール」だと漠然としているので、「最初につく脚」と「体を支える軸となる1本の脚」の二つに注目して調べました。
その結果、「起き上がる時は最初に触角が地面につき、体の後ろ側の脚で体を支えて起き上がる」というルールを見つけました。そこで、触角や脚が欠けていたらルールは変わるのか調べました。すると、触角や脚が1本無い場合もルールは変わらず、触角が2本とも無い場合は、体を支える脚だけでなく最初につく脚も体の後ろ側の脚になる、ということがわかりました。
審査委員奨励賞 賞状、研究奨励金
岩本 澪治、奥見 啓史、山本 夏希(兵庫県立姫路東高等学校)
河川に堆積した砂粒の形や鉱物の体積比から
源岩からの距離を推定する方法の提案
地球・環境科学
どこにでもある河原の砂粒についての研究は、実はほとんど行われていません。わたしたちは、砂粒からどのような情報が得られるのか興味を持ち、兵庫県南西部の1級河川である揖保川で研究を行いました。揖保川の中流から下流までの6カ所で砂粒を採取し、石英と長石をピンセットで分別しました。河川の下流に向かって、石英と長石の凹凸の程度がどのように変化するかを調べたり、石英と長石の体積比の値を比較したりしました。
下流ほど砂粒が小さく丸くなることは、経験的に誰でも知っています。しかし、砂粒がどのくらいの距離を移動してきて、小さく丸くなったのかを、数式で表すことができることを明らかにしたのは初めてです。