初年次教育学会 藤本元啓会長 (崇城大学教育改革本部長・就職部長・総合教育センター教授)※肩書は取材当時
「初年次学生の教育支援ツールとして新聞は最適」
「時事ワークシート 多様な使い方が可能」
ニュースを見ない、新聞を読まない学生が驚くほど多く、世の中の動きに対して意外というほど関心がありません。この傾向はなにも初年次学生に限ったことではなく、社会の動静(政治、経済、外交、文化、科学技術、くらし、健康、地域等々)を知らない学生が実に多くいます。自身に直接関係のない情報は不要ということなのでしょうが、視野が狭くなっていると強く感じています。語彙力や読解力の不足は従来からいわれていることですが、それに加えて観察力、洞察力、発信力等々にも不安が募ります。
新聞は、こうした学生に対する有効な教育支援ツールとして重宝なものです。書籍1冊の読破は難しくても、適量な新聞記事は、毎日読む習慣さえつければ、情報収集ツールとして、また文章作成の手本として身近な教材として最適です。
崇城大学(工学部、情報学部、生物生命学部、芸術学部、薬学部の理工系・実学大学)では、eポートフォリオ「今週の活動とトップニュース」の運用を開始しました。必修科目である初年次学生の「キャリア基礎Ⅰ」、2年生の「キャリア基礎Ⅱ」、3年生の「キャリア基礎Ⅲ」において、新聞記事の要約とそれに対する批評文の作成を毎週の宿題として入力させています。
これに並行して「キャリア基礎Ⅰ・Ⅱ」では時事ワークシートの「最新ニュース」や「新聞の読み解き」などを配布し、記事を読んで意見を書かせ、5人ほどのチームで討議して発表させます。自分で考え、文章にまとめ、チームメンバーの意見を理解し、意見を集約し、発信する力を養うのがねらいです。
「キャリア基礎Ⅰ」の授業アンケート(30年度前期)「『今週の活動とトップニュース』の作成は、世の中の動きへの関心を高めるうえで役立ちましたか」において、「役立った」52%、「ある程度役立った」38%の回答(n=520)を得ました。ある学生から、「時事ワークシートの解説記事を読んだことで新聞への関心が高まった」との話を聞かされました。その学生にとって、時事ワークシートは新聞を読む習慣化の「はじめの一歩」として有効なツールであったわけです。
また一般教養科目や専門科目でも、科目や学科にとってタイムリーな時事ワークシートを教材とし、小テスト、ペアワーク、宿題等に活用しています。新聞記事掲載から3週間ほどでの短時間で年間約350本が配信され、12の分野で検索できることは、忙しい教員にとって大変な魅力となっています。
さらに入学前教育として20本の時事ワークシートをピックアップしたワークブックを作成し、AOや推薦系の学生に対してスクーリング等での提出を義務づけています。31年度からは初年次教育とキャリア教育とを融合した通年の新科目において、夏休みの課題としても採用することにしていますし、就職活動の準備対策としても有効でしょう。
このように時事ワークシートは、教育目的に沿った多様な使い方ができるものなのです。
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