金沢工業大学(石川県野々市市)
新聞記事精選、ニュースにまつわる基礎知識が凝縮
法律など理系学生が不得手な分野まなぶきっかけに
金沢工業大学の山本成人・自己開発センター所長に、
時事ワークシートの導入の経緯と活用の様子について聞いた。
地方自治体の話も必出、公務員試験で応用きかせる
時事ワークシート導入の原点は、この十数年来、学生が明らかに変わってきていると感じるようになったことにあります。
窓口であいさつらしいあいさつができないかと思えば、言いたいことの要点も言えない。加えて、長い文章を読み書きできないばかりか、そもそも読む習慣がないのです。「数学や理科ができても、文章力や語彙がこれだけ乏しいようでは、社会に出てから通用しない」。学生に長年接してきた多くの職員や教員は、危機感を深めました。
そこでまず着目したのは新聞本体です。基礎的な日本語力を伸ばすには打ってつけの教材とみて、1年生のときから新聞を日常的に読ませるプログラムを実行しました。あわせて、志望者が近年増えている公務員の試験対策講座の教材として、2014年度から時事ワークシートを採用しました。17年度は学部の2、3年生と修士の1年生計約300人が受講します。
使っているシートは、図やグラフが付いた「話題のニュース」▽とりわけ重要なニュースをもとにした「週間トップニュース」▽英和新聞の記事を素材にした「英語」――など6種類です。
新聞本体から派生した教材にほかならない時事ワークシートには必ず、地方自治体の話が出てきます。就職をめざす自治体と違う事例でも学習していれば、筆記であろうと面接であろうと試験で応用が利かせられます。
理系の学生が不得手な分野を学ぶきっかけになる点も評価しています。例えば、「共謀罪」法案をめぐる記事を下敷きにしたワークシート。法律に関する知識は、警察や消防、自治体に就職すれば必須になるので役立ちます。
膨大な数の記事の中から精選のうえ、ニュースにまつわる基礎的な知識が凝縮されている点も長所です。A4判1ページというコンパクトなサイズも、読みやすく親しみやすいですしね。
情報摂取のマインドや習慣を身につけ、就職実績のアップに一役
今春の卒業生約1600人のうち約50人が公務員として就職しました。かつては30人弱だったので、倍近くに増えた印象です。就職先は国交省北陸地方整備局、石川県庁、金沢市役所、福井県庁、大阪府警と多方面にわたり、大半が公務員講座の受講経験者です。
学部3年生と修士1年生の場合、講座は年間70コマあり、取り組む時事ワークシートは140本にのぼります。すべてファイリングして残せる点も重宝で、ある学生が述懐していました。「印象に残ったシートを採用試験の前に繰り返し見ました」と。学生の自学自習ツールとして適しているのみならず、新聞はもとより、情報を広く摂取しようとするマインドや習慣を身につけるうえでも有用に違いありません。
- 〈時事ワークシートの使い方〉
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- ① 毎週あらたなコンテンツが加わるシート6種類の問題・正答から2本を若手の職員がセレクト
- ② 2本のシートの問題を、金曜と土曜開講の公務員教養試験対策講座の授業で学生に配布
- ③ 学生は自宅に持ち帰り、新聞や辞書、インターネットで調べて解答
- ④ 学生は解答を次週の授業に持参し、そこで大学から配られるシートの正答と照合し自己採点
お問い合わせ 朝日新聞社 時事ワークシート担当
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